読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

マダツボミの観察日誌

古典からギャルゲーまで備忘録兼感想帳

『誰かが恋した繁華街』感想

先日のコミケで購入したライフアリトルさん制作の『誰かが恋した繁華街』フルコンプしたので、感想や考察などだらだら綴っていきます。

シナリオは結構ボリュームがあり(1週間ぐらいかかった)、フルボイスでキャラも可愛いと、同人作品とは思えないぐらいの出来で驚きました。

大体のシナリオはこんな感じ。

社会不適合者である春輝君は、ある日容姿端麗完璧幼馴染(だけど男のセンスだけは絶望)の藍ちゃんとオリーブ街という異世界に迷い込んでしまう。住んでいた世界とよく似ているがどこか違うオリーブ街、そこで立ち寄った喫茶店「胡蝶蘭」には、病弱な双子の姉である杏と瓜二つな百合花という女の子がいて、百合花にべた惚れのサブマスター蓮さんに嫌味を言われつつも、なんだかんだでそこで一緒に働きながら住むことになる。オリーブ街は誰もが優しく暖かく、時間という概念がないという設定であり、そんな夢のような世界で、クソダメ人間の春輝君は、近所の幼女リコちゃんをたぶらかしたりして、現実からの逃避を続ける。しかし、そんなうまい話が長く続くわけもなく、世界の破壊者として病弱お姉ちゃん杏が降臨し、オリーブ街は衰退していく。

「貴様らこんなところで長々と何をしている、鼠のように逃げおおせるか、この場で死ぬか、どちらか選べぃ!」(バルバトス風に)

さあどうする春輝、世界の命運はお前に託された!そんな話でした。(多分に誇張表現を含みます)

 

 

 ―――――以下たぶんにネタバレ含みます。

個別√感想

藍ルート

 左から順番にやっていこうと思い、藍ルートからプレイ。うーん藍ちゃんはとっても可愛かったんだけど(好きな人に自分の人形をあげちゃうクソ重いとこも好き)、主人公の春輝くんがゴミカスすぎて、いまいち感情移入できなかったです。どのルートでもこれは言えるんだけど、春輝は基本受け身で自分からは動かず、問題が解決するのをじっと待ち、そしてうまくいかないと癇癪を起こします。問題の答えは、ほとんど作者の代弁者である神サクヤが述べており、藍に好きだと言われてはじめて藍が好きだと気づきます。それじゃあ本当にそれお前の想いなのか?って疑いたくもなります。もしいろいろな人とのふれあいから成長したと主張するならば、自分からその気持ちに気づいて春輝から告白ぐらいの積極性を見せてほしかったです。とボロクソ書きましたが、そんな駄目駄目な春輝くんでも愛してしまう、そこには明確な理由はない(一応優しいとかいう話だった)が心が愛してしまう、そんな一途な藍ちゃんがいじらしく可愛らしいシナリオでした。

 

百合花ルート

 次に恐らくメインヒロインである百合花ルートをプレイ。日常シーンは小気味よく進み、だからこそ大魔神杏が現れた後の一人ずつ消えていくシーンは胸に迫るものがありました。そしてラスト―ここからどう巻き返すのかってところで何も巻き返さず終わりを迎えます。to be continued・・・("^ω^)ってなんじゃそりゃああああってなりました。たぶん手元に続編なかったらキレて画面殴り割ってます。

まあ、夢のはかなさをただただ描いたルート、ハッピーエンド至上主義である私的には好みではない終わりでしたが、誰も救われないその終わりは、この作品とよく合致しているなとも感じました。

 

リコルート

 最後にリコルートをプレイ。個人的に一番好きなルートでした。可愛いですねリコ。声もすごく合ってると思います。

街を走り回るNPCであったリコが春輝と出会い、人となり、そして自分の存在について悩む。私も自己の存在について悩んだときがありました、いや今でもずっと考えていますが。そのとき他者を自分の存在原因として考えるとうまくいかなかったのが、強く印象に残っています。当たり前のことですが、現実では人はいずれ別れていくものですから。さて、それと同じように作中で自己同一性に悩み、杏や春輝といった他者に自己原因を求めるリコに対して、いずれは現実に戻らなければいけないことを自覚した春輝はコーヒーをいれることに自己原因を求めたらいいんじゃないのといったアドバイスをします。これに対しいったんは受け入れるリコでしたがうまくいかず、最後はやはり春輝に愛されることによって自己の存在を認めます。

「顔も……首も……背中も……胸も……お腹も」

「ちゃんとさわって、ちゃんと」

なぜリコは自分自身に自己を見つけられず杏や春輝に自己原因を求めたかといえば、それは杏がオリーブ街の創造主であり、また春輝がリコを胡蝶蘭に連れてきて人にしたからだと考えられます。終盤春輝がいなくなることに対して「リコは何者でもない透明なものなっちゃう気がします」という風に述べています。ここからもリコは直感的にそのことが分かっていたのだと推測できます。

そして最後、リコに帰らないでと泣きつかれた春輝は自分が本当にしたい、するべきことに気づきます。

『ただたしかに記録されたこれらのけしきは

記録されたそのとほりのこのけしきで

それが虚無ならば虚無自身がこのとほりで

ある程度まではみんなに共通いたします』 『春と修羅

これは私の好きな詩の一節ですが、春輝が気づいたのはまさにこの通りだったのではないでしょうか?

今見ているこの景色こそが私のいる世界であるのだから、それが例え夢であっても俺はリコを選ぶ。そう選んだ春輝はかっこよかったです。

エピローグでリコと春輝は幸福が飛び込んでくる胡蝶蘭をでて無垢な愛であるカーネーションを立ち上げ、そこで永遠に変わらない日々を過ごします。

ただこの永遠が長くは続かないであろうことが悲しい。(遠くない未来婆ちゃんが死ぬ)しかし、藍の髪飾りという因果が切れた春輝なら世界の終焉とともにリコと消える事ができるかもしれません。もしそうであれば良いなあと思います。

と、ここまでの流れが完璧で素晴らしかったです。

 

ただ正直どうみても小学生であるリコに大学生の春輝がキスしたり体触ったりするのは犯罪だと思います(織衣舞街に法律はないのよby藍)

 

総評

リコルートがずば抜けてよかったです。ただこれは私自身の感想なのでプレイする人によって180度変わりそうです。

誰恋は3人のヒロインがそれぞれ藍が現実代表、リコが夢代表、百合花が現実と夢の合いのことなっています。まさに百合花ルートは胡蝶の夢なのか。ヒロイン選択画面の藍(左)、百合花(中央)、リコ(右)も暗示的です。だからこそ藍とリコを選んだ時は幸せになるけど百合花を選ぶと幸せとは程遠い形になるのではなないのでしょうか?夢と現実選べるのは片方だけなのかもしれません。

続編の彼恋でいろいろ明かされるということで期待しつつ、プレイしていきたいと思います。

 

蓮さんの謎

 藍ルートやったまでは、ちょっと感じ悪いやつだなぐらいの印象でしたが、百合花やリコルートでの蓮さんは相当にイヤな奴です。(病弱である杏さんに対しての発言や、リコがコーヒーをいれるくだりでの発言等)さて、ここでオリーブ街というのは病弱であるお姉ちゃんとなんかよくわかんないけど最後ぽっとでてきたおばあちゃんの想像の世界であることは作中で明記されています。オリーブ街は誰もが優しい世界であるはずから、蓮さんの存在は矛盾します。

世界の創造主である杏が現れた時の藍ルートと百合花・リコルートでの蓮さんの反応が違うのも気になります。藍ルートでは杏が胡蝶蘭で働くのを蓮さんは特段の反対もなく黙認しています。一方、百合花・リコルートでは杏が胡蝶蘭で働くことに対する蓮さんの態度は劇的です。断固拒否し、さっさと元の世界へと帰るように促します。これは藍ルートでは、春輝が藍という現実と向き合っており、すぐに現実に帰還することを知っていたから安心していて、一方藍・リコルートではそれぞれのヒロイン(虚構)に心を奪われており、このまま世界が壊れるまでここにいるんじゃないかという危惧があったからじゃないでしょうか。ここから考えられるのは、蓮さんはオリーブ街の真相(杏や婆の想像の世界である)に気づいているということです。リコルートで杏に対して「百合花に似たお前だから困るんだ」的なこともいっているのもこの説の裏付けになると思います。さらに、序盤で百合花は、「蓮さんは春輝と同じように雇った」といっています。存在がそこにあたりまえのようにあり、そこに理由なんてないはずのオリーブ街にて、人を雇うといったような変化は起きないはずです。ここから考察するに、蓮さんも何かの想いに引き寄せられて現実世界からやってきた人間なのではないかとも考えられます。まあこの辺は続編である彼女が恋した繁華街で語られるのかな。