マダツボミの観察日誌

ギャルゲーマーによる、ギャルゲーやラノベの感想、備忘録とか

大図書館の羊飼い感想

今回は先日発売されたオーガスト最新作『千の刃濤、桃花染の皇姫』の感想・・・・・・

ではなく、同じくオーガストさんの大図書館の羊飼いを今更ながらにプレイしたので感想書きます。

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千の刃(以下省略)ですが、発売日の翌日にソフマップにちょっと興味がわいて買いに行った所、予約のみの販売だということで入手することはできず、行き場をなくした一枚の諭吉は同じオーガストさんでまだ未プレイの大図書館の羊飼いへとい誘われたのでした。話ずれますけど最近ソフマップの中古ゲームの品ぞろえよくないですよね?昔だったらちょっと有名どころの作品なら絶対あったのに最近結構見つからないことが多い気がします。

話を戻して、オーガストさんの作品はFORTUNE ARTERIALをやった以来になりますね、もう8年も前にやった作品なので内容は大分というか白ちゃんが可愛かったぐらいしか覚えていませんが、なかなか面白かったような記憶があります。というかもう8年も経つんですね、こんなに長い間ギャルゲーやってるとは当時の私は思っていませんでした。

さて本題に戻って感想ですが、そうですね一言で言えば夕飯のさんまに大根おろしがついてなかった感じしょうか。同義語で福神漬けがついてないカレーがあります。

 本作は、キャラデザはべっかんこう氏のグラフィックがなんだかんだいっても可愛く、キャラの掛け合いはいい感じにウィットがきいてて読んでて飽きさせない作りになっていました。また随所で演出の良さも光り、共通ルートは完成度の高さを感じさせる出来です。流石老舗メーカーオーガストだなと言わざるを得ません。

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まるでアニメのような演出

 しかし、キャラ同士の横のつながりを意識し過ぎたせいなのか個別ルートは全体的に印象に残りにくい出来であり、またこの作品で恐らく主題になってたであろう羊飼い設定や主人公の未来予知能力が凪ルート以外ではほとんど触れられていなかったためにシナリオの味付けが薄味気味なのが残念でした。それでは、それぞれの個別ルートについて触れていきたいと思います。

つぐみルート

 つぐみルートを読み終わったときの最初の感想は「こんなに普通なヒロインを普通に攻略したのは久しぶりだな」でした。いきなり会ったヤツに「この学園をもっと楽しいものにしたいので手伝ってください」などという宗教勧誘を行ったり、突然突飛なことを言って図書部の面々を混乱させたりしたつぐみちゃんですが、まあ思ったことを思ったようにやってる普通の女の子なんですよね。これ全然活動がうまくいってなかったら、恐らく心が折れて少し影のある女の子になってたと思いますが、如何せん図書部の連中が優秀すぎて、つぐみちゃんが適当に言ったことを片っ端から実現させてしまうので、純粋なままでいられると言う。図書部、社会人の私より仕事してるってずっと思ってました。そして抱えてる悩みも可愛いらしいんですよね、病弱の妹に自分がすごく学園で活躍しているという嘘をついてしまったから、それを実現させるために図書部を作ったけど、そんな身勝手な理由でみんなを巻き込んでいいのかとかいう。

 基本的にギャルゲーって少女救済の形をとってると思うんですけど(何か過去に闇を抱えた少女を救済することでカタルシスを得る)、今作に限っては主人公救済の形をとってるんですよね。つぐみちゃんは闇なんてものをほとんど感じさせないし、また闇を作らないようなシナリオ展開(活動はすべからく上手くいったり、入院してたさよりちゃんもさらっと回復する)でした。これによって、過去に虐待を受けたことで人間と触れ合うことに対して極度に不安を持つ主人公である筧京太郎が救われることへの説得力が増しています。これは後述の佳奈ルートや凪ルートの展開の肝にもなっています。

まあもうちょっと味付け濃くしてもよかったかなとも思います(後述のつぐみTRUEルートで全てを過去にする展開で筆者は大喜びする)。

玉藻ルート

 クレイジーサイコレズと思いきや普通の女の子だった、たまたまちゃん(後日一匹のマダツボミが無残な姿で発見された)。シナリオはギャルゲーにありがちな他者依存型からの脱却でしたが、他者依存型マンの割に玉藻ちゃん自身は非常に優秀なので特に重くもなりませんでした(絵画コンクールで賞もらっちゃうレベルの才能を持つ奴が他者依存型マンってそれもうある種の嫌味だよ)。後、ルート序盤で意味深に出てきたお姫様設定はどこにいったのでしょう?TRUEルートで回収されると思いきや特にされずなんだかなあといった感じです。

他いろいろツッコミたい所はありましたが、ポニテ黒髪で真面目だけどユーモアもあるといった私の好きな要素が詰め込まれたキャラである玉藻ちゃんは可愛かったので総じてよかったです(キャラがよければすべてが許せる典型的な例)。

千莉ルート

 千莉ちゃんは子供っぽすぎて個人的にあんま好きじゃなかったです(世間の千莉ファンに殺される発言)。千莉ルートで一番の山場はフラれてしまった佳奈すけの心理描写でした。

佳奈ルート

 共通ルートで一番好きだった鈴木さん(汎用苗字過ぎて誰だかわからない定期)ルートはヒロイン4人の中で一番の出来でした(唯一まともだったとも言える)。こういう本当は思慮深いんだけどわざと馬鹿っぽく明るく振る舞う系後輩キャラは私の三大好物の一つであります(じゃあ他の二つはなんなんだよ)。本好きってところも非常に好感度高いです。佳奈すけと部屋で静かに並んで本を読むデートしたい人生でした。結婚してください

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悲C

 佳奈ルートはキャラだけでなくシナリオもよかったです。ちょっと暗い過去から自分自身をうまく出せなくなってしまった少女を救済していくという形式のよくある話ですが、主人公と付き合うまでの流れが自然で説得力があり良いものになったのかなと思っています。これについてはほとんど同じ構造をとってる凪ルートの感想にて詳しく書きたいと思います。

胸の大きさに反比例して非常に良いルートだったです。

サブヒロイン(真帆、紗弓実、水帆)ルート

 サブヒロインルート(全体的に変換しにくい名前だ)は全体的に短かく印象は薄かったのですが、唯一芹沢ちゃんルートだけはすごくよかったです

芹沢ちゃん可愛い!可愛くない?ビジュアル面でもそうなんだけど、強気だけど気取らない親しみやすいタイプである所とか、クールぶってるけどほんとは甘えたがりな所とか大好物でした。またシナリオでは、ちょっとはずかしがりながら気になってる男の子に夜電話しちゃうシーンとか、ラジオで告白とかいう直球勝負なシーンといった見てるこちらが恥ずかしくなってしまうような展開が、少し前のギャルゲーを彷彿とさせてとっても良かったです。他のルートもこのぐらいの熱があったならよかったのにと思わずにはいられませんでした。

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このシーンは机をたたいて立ち上がってガッツポーズしてた

凪ルート

 とりあえず、こだっちゃん可愛いかったです(十人並みの感想)。キレ芸も心地よかったですし、いきなりテレビ見に部屋にやってきてベッドで寛いでるシーンとか、ふざけてんのか?惚れてまうやろって画面の前で言ってました、京太郎の鉄の精神には頭が下がります。

 肝心のシナリオですが、「大図書館の羊飼い」の他のルートは凪ルートを描きたいがために存在していたということがよく分かるルートでした。このゲーム、主人公と凪以外のメインキャラクターはあまり心に影がありません。また多少あったとしても自己解決できるレベルだということはシナリオ上から判断できます。また佳奈すけがTRUEでも述べている通り羊飼いになるとは巧妙に隠された自殺なんですよね。言い換えると羊飼いに憧れた凪も京太郎も自殺志願者であったと言えます。また共通、個別ルートは少女救済ではなく、主人公救済の形だったということはつぐみルート感想にて述べました(これは後述の各ヒロインのTRUEルートの構造からも明らかである)。すなわち凪ルートは各ヒロインによって救済された主人公が満を持して自分に似た少女を救済しに行くという構図であると言えます。だからこそ凪には京太郎しかいないという強い説得力を感じました。これは佳奈ルートにも言えることでしたが、その過去の重さ故に凪ルートのほうがその度合いは強かったです。それゆえに純粋に京太郎に甘えてくる凪ちゃん可愛かったですね。ちょっと涙が出ました。末長く幸せに暮らしてください。

その他TRUEルート

 TRUEルートは各ヒロイン達が羊飼いになりそうになる京太郎を助けてくっついて終わりという構造をとっていました。父親との決着という重要なシーンが含まれていたものの、全体的にこれ必要だったか?というのが率直な印象です(父親のシーンは凪ルートに詰め込めば凪ルートの完成度はより増した)。

 ただしかし、シナリオの出来は置いといて、つぐみTRUEは裸エプロンをやってくれたので個人的には120点あげられます裸エプロン好きは是非プレイして確認してください。でも個人的に裸エプロンは、パンツを穿いてて欲しい派の人間ですので、そこは分かり合えなくて残念でした。

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京太郎お前はよく分かってる

総括

 総括ですが、「大図書館の羊飼い」はシナリオゲーにもキャラゲーにもなり損ねた中途半端なゲームというのがプレイ後の率直な意見でした。キャラゲーというにはキャラの掘り下げやイチャイチャ度合い(なんだそれは)が足りてないし、シナリオゲーにしては佳奈と凪ルート以外のシナリオがお粗末で、肝心の凪ルートも他の全てを覆せるほどの力はなかったです。そもそも羊飼いという設定がいらないと感じてしまうんですよね、そんなのいなくてもストーリーは回ってますし(凪ルート以外)、もう少しうまくできたんじゃないかと思ってもしまいます。

 しかしこれこそがオーガストが言いたかったことなんじゃないかとも考えられます。とにかく普通の日常を描き、非日常である羊飼い要素を否定する。バッドエンドで京太郎が羊飼いになるルートがあっても良かったもののそれすらありません、必ず誰かが迎えに来ます。それと前述の凪ルートでの感想にも書きましたが、羊飼いとは自殺の隠喩だと佳奈すけを通してオーガスト自身が言ってます。つまり「大図書館の羊飼い」では自殺なんていうのはそこにたとえどんな高尚な理由があっても駄目だ、あなたを必要としている人は必ずどこかにいるはず、世界はこんなにも楽しいことがある、だから君も一歩を踏み出そう、そんなありふれたメッセージを引きこもり気味なギャルゲーユーザーに伝えたかったのかもしれません。

 一昔前は自己犠牲や献身を主題とした作品が流行っていたように感じましたが、最近ではエゴイズムの重要性をテーマとした作品が多く見られるように感じます(たまたま私のやったものがそうだという可能性もありますが)。これも最近の何事にも平等を謳い、調和を乱すものは国民全員でたたく社会主義的な流れへの反発なんでしょうか?

 こんなところで締めたいと思います。長くなりましたが、ここまで読んでくださった方ありがとうございました。