マダツボミの観察日誌

古典からギャルゲーまで備忘録兼感想帳

【SFと下ネタのマリアージュ】景の海のアペイリア感想・考察

久々に本気で面白くまた睡眠時間が削られてしまいました。1日36時間にしてくれ。

『景の海のアペイリア』の感想と考察を残します。

 

 本作はAI、量子力学タイムリープ多世界解釈、クローン技術、VRMMO、シンギュラリティ、そして下ネタと私の大好きなキーワードが揃っており、そしてこれが面白いぐらいに密接に絡まり、最後に綺麗にほどける最高の作品でした。

 上記のキーワードが好きな人は絶対に面白いと思うので、ネタバレを見ずに、プレイしそして感動・・・はしないかもしれませんが、何転もする世界観を楽しんでみてください。そして新たな価値観に出会えるはずです。

 そんなものエロゲ―に求めてないという正論がありますが、普通のSF小説と比べて、図解が丁寧ですし、声がついているので分かりやすいという側面があり、これはエロゲーでしか表現できないと私は考えます。また難しい内容の後は、心底くだらない(最大級の誉め言葉)下ネタバトルが挟まりますので、箸休めにもいいかと思います。個人的に、この真面目な議論と下ネタのバランスが疲れなくて丁度よかった。 

 主人公が某SA〇のようなデスゲームに囚われるわけなのですが、その世界で主人公は精液をコストに能力を発動するので常にオナニーしながら戦います。多分未プレイだと意味わかんないと思いますが、下の画像みたいなノリが嫌いじゃなければ絶対面白いと思います。私は死ぬほど笑いました。

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クッソ真面目な考察からのこの下ネタバトル(フルボイス)

 

以下本編考察とか(ネタバレ含む)

 シナリオの感想ですが、構成上の問題で実は最後の三羽のシーンさえあればほとんど事足りてしまう(それまでにも沢山仮説が出てくるがそのほとんどが主人公の妄想)のはちょっと残念でしたね。シンカーの正体あたりまでは大体予想通りでしたが(ブックマンはちょっと予想外)、観測者のくだりは本当に予想もしてなかったので現実世界にウイルスが沸いた時点でぶわっと鳥肌がたちました。そこからは怒涛の展開でああここまでプレイしてよかったとそう感じさせられましたね。

 とはいえ最後の展開には疑問に思う部分もありました。本作の最後では、アペイリアも助かって、ファーストの世界、現実世界でひどい目にあっていた女の子たちも救い、AIと人間(三羽)が共存しあう理想の世界を最後見せ、とても綺麗に終わっているわけです。ですが、これ綺麗に終わりすぎじゃないかなと初見で思いました。最後に至るまで散々話をひっくり返され続けてきたからそう思ったのかもしれません。また最後のシーン、登場人物が5人しか出てきませんでした。これは本当に現実世界なのでしょうか。EDの後、干渉縞が消えるのも気になります

 本編では、干渉縞の消失の理由は二つ考えられています。一つは多世界が存在すること、もう一つは量子がどちらの二重スリットを通ったか観測することにより、量子の性質が波から粒子に変化し干渉縞が消えることです。ではこれらについて考えられる可能性を上げてみましょう。

1.現実世界が多世界であることを示唆している説

 これは上記前者の理由から考えられる説ですね。ファーストの世界はシュミレーションの世界なので一本道の単一世界でした。零一達が現実世界に受肉したことで、彼等には様々な未来が待っている(多世界)ということを示唆したとも読み取れます。

 2.現実世界にも観測者がいることを示唆している説

 本作では、基本的に多世界解釈を否定しているようですので、こちらのほうが優位なのではないかと考えます。ではここでいう観測者とは誰なのでしょうか。

(1)私たちプレイヤー説

 ネットでちょっと調べましたがこれを推してる人が多いように思えますね。この『景の海のアペイリア』の世界は、私たちプレイヤーによって観測されましたという、製作者の遊び心という意見が多かったですね。

 これについて我々の認識がゲームの世界に干渉しているということであれば、常に干渉縞は消えていなければおかしいと言うのと、そもそも干渉縞はブラックボックスである観測箱の二重スリット先でどちらに量子が存在するのか観測することにより消失するという話ですから私たちはそれを観測できているわけではないという問題があります。

 前者については、本作は私たちの意志でもって読み進める読み物として確定した過去を参照しているため、『アペイリア』の時間軸では私たちは存在しておらず(=観測していない)、そのため干渉縞も消えないと解釈することができます。一方で後者については、作中で三羽が『ファースト』を観測した際に干渉縞が消え、零一が観測者の存在に気づくという描写がありますので、厳密には定義が違いますが一応この世界ではそういうものだと理解することができます。

 ただ一方でこの世界では多世界の可能性を否定しきれてはいません。作中では、シンカーがタイムリープ後の時間のズレを元に多世界の可能性を提示し、零一はその現象は単一世界でも解釈が可能だとして話は進み、最後現実が仮想現実であったことから『ファースト』は単一世界であると断定しています。つまり結果論として『ファースト』は単一世界であったので上の理屈は通りますが、『現実世界』の多世界の可能性は否定しきれませんので、上で言った理屈は厳密には通らず少しの疑問を残す回答となります。

(2)現実世界の更に上位世界の人間説

 もし多世界解釈を否定するとすれば、通常の方法では干渉縞が消えるわけがないので、やはり上位世界の人間の存在を疑ってしまいます。ただこれは作中で怪しいキャラがいませんし(あえて言うなら、最後に唐突にゴミがついてると主人公の頭に触れた久遠君が一番怪しい)、何より後味が悪いのでできれば考えたくないですね。

(3)実は現実世界に受肉できたというのは勘違いでやはり仮想現実にログインさせられていた説

 (2)と同様に多世界解釈を否定するならば、干渉縞が消えるのはシュミレーション仮説が採用された世界であると考えられます。

 また、あまりにも現実世界に受肉した後の物事がうまくいきすぎてます。都合よく遺伝子研究所で受肉し、零一と過去にシュミレーション上とは言え肉体関係のあった三羽を使って殺そうとさせ、そのあともいくらアペイリアが万能選手だからとはいえ何不自由なく生きています。普通にシンギュラリティに対して強い警戒感を持っているなら、受肉した瞬間速攻焼却処分を試みたり、そこからたとえ脱出できても常に追われるような存在になりそうなものです。

 ではなぜそうならなかったか?最後現実世界にログインしようとする零一をなんらかの方法で別の仮想現実にログインさせ、三羽を送り込みそこが現実であるというそれらしい説明をさせる。零一の目標はアペイリアの生存であるから、アペイリアが破壊されようとしなければその現実に疑問を持たない。送りこまれた三羽も現実世界では碌な役割は与えられないし、AIとは言え自我を持ち、恋をした零一と一緒に過ごせるならそこが仮想世界でもいいと考えたのかもしれない。そして、シンギュラリティは現実に影響を及ぼさなければ問題ないと考え、あとはその空間で自由に生きさせる。というストーリーがあったのではないでしょうか。

完全に妄想ですけど、まあそれはそれで幸せなのかなとも感じます。認識しているそこが現実ですから。

 

ここまでいくつか可能性をあげてきましたが、どれが正解なのかはっきりとしたことはわかりません。ですが、最後の仮想現実にログインさせられている説をここでは推しておきたいと思います。やはり綺麗に終わりすぎなのが気になるのと、最後のシーンは希望をいただかせる演出ではなく、まだ終わってないぞという演出であるように感じたからです。少し後味が悪い展開ですが幸せであることには変わりありませんので、ハッピーエンドなのかと。認識できなかったら仮想現実も現実ですよ、間違いなく。

 

 話は変わってキャラについてですけど、ダントツでアペイリアが可愛かったですね。特に指を挟んでキスするシーンがめちゃくちゃ良かったです。尊い。他の女の子もよかったんですが、話の途中ということもありイマイチ寄り道感が拭えず感情移入がしきれませんでした。

 その点最後に全部持って行ったといってもいいシンカー君は凄い良かったです。ただそれだけに、シンカー君の心情を考えるときついものがあります。あの最後の瞬間を迎えるまでにどれだけの苦悩があったか、本当は零一になりたいのになれない、存在が矛盾している。一からやり直したらまた全然違う感想になりそうですね。1週目は零一を応援しているけど、2週目はシンカーを応援したくなりそうです。

 

長くなりましたがこの辺で感想〆たいと思います。

久々に自分の好みにフィットした作品に出会えて幸せでした!