マダツボミの観察日誌

ギャルゲーマーによる、ギャルゲーやラノベの感想、備忘録とか

【幸せの形】なないろリンカーネーション琴莉√感想【ネタバレあり】

 間に色々感想を書けていないゲームがあるんですが(大体が問題児アインシュタインより愛を込めてのせい)、今回はシルキーズプラスWASABIさんの『なないろリンカーネーション』プレイしたので感想を残していきます。

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 本作ライターのかずきふみさんは、『きまテン』で初めて知り、『9-nine-』シリーズにエロハマりしたライターさんで、他の作品もずっとやってみたいと思っていました。

 本作は妖怪を使役して、現世にただよう幽霊を成仏させていくというお話で、一部バイオレンスな部分もありますが、概ねほんわかした作品ですね。

 と、前置きはこの辺にしまして、早速メインヒロインである琴莉ルート感想に参りましょう。

 正直、序盤は少し冗長かな?と思ってたものの、終盤の展開に驚かされ、最後は馬鹿みたいに泣かされました。手紙はズルいって言ったでしょ!!!!

 まず序盤について、この作品は鬼の力が強すぎて、探偵ものとしては驚きに欠けるところがありました。だって、サイコメトリーとテレパシーがあったら大抵の事件は一瞬で解決ですよね。最初のレーザーポインターの事件がそれを示していて、今考えればそれがこの作品は探偵ものではないよとの意思表示だったのかもしれません。それもあり、事件の話は終盤以外はほとんどなくて、シナリオのほとんどが飯の話でしたね

 最初は私も、一家団欒の風景を見て、幸せな気持ちをおすそ分けしてもらい、何となく心が朗らかになるような気持ちだったのですが、流石に繰り返し見せられると飽きてきて、まーた飯の話してるとか思ってたわけです。

 しかし、ラストの展開を見てしまうと、あの繰り返し訪れる幸せな団欒の日々が、とてつもなく尊いものに見えてくるのが凄い。理不尽に命を奪われて、でも幽霊として留まって、自分を認識してくれる人と鬼たちと一緒に、終わりある幸せを過ごしている、その風景を思い出しただけで泣けてくるのです。この構成力が本作の最も優れてるところと言っても過言ではないでしょう。

 また、終盤の展開については、途中から違和感を確かに感じてましたし、犯人の部屋にたどり着いた時点で私もうっすら察してしまいましたが、あの展開は悲しすぎる。お役目がこんなんばかりだったら全然心が持たないですよ、本当。優しくなければこの役目は務まらないが、優しすぎれば心が壊れる、世の中の不条理を見せつけられたようです。

 続けて、本作のエンディングについては賛否あると思います。琴莉√は、琴莉とお別れして、来世で恋人になる恐らくグッドエンド、幽霊の琴莉と許される限り一緒にいるノーマルエンドがあります。特に後者については余韻が台無しであるし、物語の流れからしてもおかしさを感じますが、このエンディングを作れるというのがノベルゲーの醍醐味なのではないかと私は思っています。小説などでこんなエンディングを書いた日には駄作判定を受けると思いますが、ノベルゲーにはそれを許容できる懐の深さがある。そして、どんなにご都合主義であったって、それを見たい私たちユーザーがいるわけです。

 メリーゴーランドで逝かないでくれと叫ぶ真は、まさに私たちの代弁者でした。こんな終わり方はないよ、どんなに綺麗ごとを並べたって、一緒にいたいという気持ちに嘘をつけない、たとえ先延ばしと言われようとも、色々なことが制約された幽霊と言う存在として琴莉を縛り付けてしまう我儘を言ってでも、この刹那を楽しんでいきたいと言うのは、とても人間的であるとも思えます。もう逝くなと言い出してからは涙で画面が見えませんでした。

 ですがふと冷静になると、人の心と言うのはとても流動的で、どこまで好きであっても変わってしまうものだとも同時に思ってしまうのです。その心が熱ければ熱いほど、急速に冷めていく―ということはよくあることでしょう。その過程で家族になれれば、一緒に生きていくという大目標が生まれますから、うまくいくかもしれません(古い考え方ですか?)。ですが、琴莉はあくまで幽霊で、どこまでいっても一緒には生きられなくて、最初は本当に好きであったのに、段々義務感から好きだと言うようになって、互いに苦悩する姿が容易に想像でき、心が苦しくなります。

 長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ 

 百人一首にこんな一首があります。永遠をベッドで誓って別れた朝、本当か信じられず心が乱れてしまうと歌った唄ですが、琴莉もいつかはこのような気持ちになってしまうのやもしれません。

 あなたは永遠を信じていますか?

 

 私は信じていません。だからこそ、どちらかと言えば琴莉とお別れして、来世で恋人になるエンドの方が幸せだと思います。ですが、どちらもあり得た話であり、それをしっかりと描いてくれたライターさんには感謝しかありません。

 

 本作は、丁寧なシナリオ構成に、瞬間的な感動をくれ、上でも書きましたが少し退屈だった日常パートすらも、思い返してみれば本当に幸せな思い出となっていて、終始隙がない作品だったと言えるでしょう。期待していたものよりも遥かに上を行ってくれて、私は大満足です。『9-nine-』の次回作が全年齢版!ということで、少し悩みどころですが、ライター買いもありかなと思うぐらいには、このライターさんを好きになりました。

 引き続き応援を!というところで、今回は締めたいと思います。ではでは。