マダツボミの観察日誌

ギャルゲーマーによる、ギャルゲーやラノベの感想、備忘録とか

ギャルゲーマーが読む『桜の森の満開の下』

 今回は、坂口安吾著『桜の森の満開の下』の感想を書いていきたいと思います。どうでもいいですけど、桜の森を変換したとき候補の一番上にサクラノ森が来てたらあなたも立派なギャルゲーマーです。(タイトル回収)

 これを読んだきっかけは、森見登美彦著『新訳走れメロス』の中にある、新訳桜の森の満開の下を読んだときに得も知れぬ気持ち悪さと美しさの両方を感じ、原典のほうはどうなんだろうと興味を持ったことにあります。あとサクラノ詩をやったときにそのうち読もうと思っていた作品でもあります。

 ということで100万回は書かれてきたであろうあらすじ。

 昔々とある山に、山賊が住み着いていました。その山賊はエロゲにでてくるようなこてこてのテンプレ山賊で、通りかかった旅人の身ぐるみははがし、気に入った女は自分の女房にしていました。そんな山賊でも怖いものはありました、それは桜の森でした(満開の桜は当時人の木を狂わすと怖がられていた)。

 ある日、いつもと同じように山賊は旅人を襲い、その妻を攫ってきました。山賊は最初亭主を殺す気はありませんでしたが、女が美しすぎため、体が勝手に亭主を斬っていました。その攫ってきた女でありますが、こいつがとんでもないわがまま女で、家に住まわせていたほかの女房を殺させたりと、様々な要求を山賊にしていきました。そして都が恋しくなった女は、山賊に都へと移り住むように言い、山賊は女とともに都に行きます。

 都へと行った山賊と女でしたが、そこで女は「首遊び」に嵌りました。「首遊び」は、山賊に都に住む様々な人間の首をとってこさせては、その首を使ってロールプレイングするという残酷な遊びのことです。「首遊び」のために毎夜都の人を斬って女に献上してきた山賊でしたが、都暮らしになれないこともあり、山へ戻ることを決めます。しかし女は「首遊び」に嵌りすぎてもう山賊なしでは生きる事はできませんでした。それゆえに女は山に戻る山賊についていき、説得させいずれまた戻ってこようと画策します。

 山賊は女を背負って山に戻ると、桜の森は満開でありました。山賊は山に戻ってきたことが嬉しく、恐れていた桜の森の満開の下に歩きこみます。すると一陣の風が吹き、背中がどんどん冷たくなっていきます。ふと振り返ると女は醜い老婆の鬼に変化していて、山賊の首を絞めてきました。山賊は必死で鬼を振り払い、女の首を締めあげます。

 我に返った山賊は、元に戻った女が桜の花びらにまみれて死んでいるのを見ます。山賊は初めて泣きました。山賊が死んだ女に触れようとすると、女の姿は搔き消えてただの花びらになっていました。そして花びらを掻き分けた山賊の手も消え、後に残るのは冷たい虚空だけでした。

 最近、私がギャルゲーをやっているときに疑問に思うことがあります。それは、多くのシナリオで他者依存を否定しながら、愛を肯定することの矛盾についてです。私は、愛とは最大級の他者依存ではないかと考えています。他者の行動如何によって自分の心まで揺り動かされるわけですから。フラれればそれだけで自己を否定されたように感じ、浮気されたら怒りと悲しみに心が支配されるわけです。だから愛はすべてなんですよ、それ以外同居できない、”自分”を保ちたければ愛を捨てなければいけない、ストリックランドが芸術のために妻を捨てたように、サクラノ詩の直哉が誰ともくっつかずに物語を終えるように。

 さて昔の人々が桜を恐れた理由はそれが美しすぎたからではないでしょうか。美しすぎて心を奪われ自分が自分でなくなってしまうのを恐れた。それは恋や愛と似ていますね。

桜の森の満開の下』でも山賊は美しい女に惚れてしまい、自分を見失います。普段の自分と違う行動を取るところから始まり、自分の女房達を殺し、自分のすべてであった山を捨て都に行き、人をたくさん女のために殺し、そして何かが違うと感じ山へと戻るが、女を殺すと自分も消えてしまう。女を殺すと山賊も消えてしまうのは、山賊に元の自分が残っていないことの暗示ではないんでしょうか、女が消えたから同様に山賊も消えるという。だから私はこの作品から、愛の恐ろしさを感じました。

 ここまで、愛によって元の自分が消えてしまうことの恐ろしさを述べてきましが、私はこの現象をそこまで悪いものであるとは捉えていません。元の自分が消えてもまた新しい自分が生まれます。他者依存でもいいじゃないですか、その人がハッピーならその人の世界ではハッピーです。人間というのは変わっていく生き物ですから、そのときそのとき他者に影響されながら変わっていけばいいと思います。でもそのとき重要なのは、それがおかしい状態であると認識して、どこかで自分を俯瞰しておくことだと思います。女のために他の妻を殺したり、都の人間の首をとってきたりしたらもう戻れませんから。

 というわけで感想はこの辺で締めたいと思います。私は岩波文庫坂口安吾短編集を買って読みましたが、白痴をはじめとして愛の形にも多様な形態があることを教えてくれる良い著作でした。今回の『桜の森の満開の下』ですが短編で1時間もかからず読めますし、今は青空文庫で無料で読めますので、まだ未読の方は読んでみてはいかがでしょうか?

心刀合一を以て限界を超える―千の刃濤、桃花染の皇姫感想

 発売日翌日には手に入れられなかったものの翌週の土曜には入荷したようで、無事オーガスト新作千の刃濤、桃花染の皇姫を購入することができ、ひとまず終わりましたので感想を書きたいと思います。エロゲはがある生き物なので、旬が終わらないうちにやることがてよかったです(前回平気で3年前のゲームをやっていた人間の台詞ではない)

*この感想には激しくネタバレが含まれています、ご注意ください。

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図書部のお仕事でつぐみちゃんがコスプレをしてくれました、えっ違う?今回のメインヒロイン?これは失礼しました。

  正直今作ですが、前作の大図書館の羊飼いがあの感じだったのであんまり期待してなかったんですが結構面白かったです。一言で言えばエロゲ―になったファイアーエムブレム

 世界観は明治維新と終戦後の日本と現代をかき混ぜた下地に武人や呪術といったファンタジー要素をトッピングした伝奇もので、一つ一つの要素はそこまで新しくもないんですが、うまくまとめられていたので新鮮に感じました。

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月と六ペンス感想

月と六ペンス読み終わったので備忘録代わりに記事にしようと思います。

*今回は真面目な記事ですのでご安心してお読みください。

今回私が読んだのは岩波文庫から出てる行方昭夫さんの翻訳版ですね。月と六ペンス (岩波文庫)

月と六ペンス (岩波文庫)


 

この作品は世界的画家であるゴーギャンをモデルとしたストリックランドの生涯を彼の友人の視点から描いた作品になっています。ただ、この作品を読み終わった後にゴーギャンについて調べたら事実とは結構異なる部分がありましたので、創作物だという認識で読んだ方がいいと思います。

さて、作家を職として生きている主人公である私は、イギリスでの社交的で変わらない生活に飽き飽きしていました。そんなところでストリックランド夫妻と出会います。この夫妻に出合った時、主人公はなんて面白味のない普通の幸せな家庭なのだと思い、特段の興味を寄せませんでした。しかし、ある日突然夫であるチャールズストリックランド氏は、妻を置いてパリへと失踪してしまいます。困惑した妻は主人公にストリックランドを連れ戻してきてほしいと頼み、義憤と好奇心から主人公はパリへと説得しに向かいます。そこで奇妙なストリックランド氏と会うところから交流が始まり物語は進んでいきます。

このストリックランド氏はとにかく終始クソ野郎なんですが、なぜか憎めないそんなキャラをしていました。突然絵を描きたくなったから、女に縛られたくなかったから、40歳という歳で証券マンという安定した地位を捨て、少ない貯金でパリに来て絵描きになります。仕事もろくにしない、金の無心だけはする、部屋の掃除もしない、自分の世話もできない、自分に親切にしてくれるものに暴言を吐く、挙句その妻を寝取り捨て、その妻が自殺してしまっても何も思わない。でもストリックランドの行動言動は一貫しているんですよね、とにかく自分の中にある何かを解放したいがために絵を描く、そこに名誉はいらないし、愛は大きすぎてそれと両立しないからいらない、でも自分の中にある性欲は抑えきれないから、たまに抱くための女が必要で、使い終わったらその女には興味はないし、絵を描くことに時間を使いたいから自分に構わないでほしいと思う。そしてこのストリックランドの性質を描いた描写が秀逸なんですよね、ほんとにこいつは自分のこともしくは求める美以外に興味ないんだなってことが伝わってくるんです。だから凄くゴミ野郎なのに憎めない、でもストリックランド氏にそんなことを伝えたら興味無さげに「犬にでも食われろ」って言われそうですね。天才ってこういう人間なのかあとも思います。私はこういう生き方を決してやってみたいとは思わないけれど憧れますね。

その後いろいろあってストリックランドはタヒチへと行きそこで病気で死にます。そこで有名な「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこに行くのか」を描いたということです。ストリックランドは自分が解放したかったものを表現することができたのでしょうか?私は絵画について、全くの素人ですのでこの絵を見ても、なんか怖い(小並感)程度の感想しか生まれませんでしたが、これだけ他人に迷惑をかけたのだから実現できたのだと願いたいです。

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 ゴーギャン作 我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこに行くのか

月と六ペンスはもともとサクラノ詩をやった時に真琴ちゃんの天才観で出てきた作品で興味を持ち読んだのですが(結局ギャルゲー)、新しい価値観を見つけられた良い作品だと思いました。

【エレノアちゃん】TOB感想【可愛い】

突然ですが、テイルズオブベルセリア面白かったので感想書きます。あまりに面白かったので睡眠時間と会社での信用を失ったり失なわなかったりしました。総プレイ時間は140時間ぐらい。

*このレビューにはエレノアちゃん要素を多分に含みますご注意ください

 

 

まずテイルズと言えば戦闘の面白さが売りということで戦闘面の感想から。今作は歴代テイルズ中個人的トップのグレイセスFの次ぐらいに面白かったです。

大体のシステムはグレイセスFと一緒で、ベルセリアでは技を自由にセットできるところが好感度高かったです。しかし、ベルベット以外のキャラが少し使いにくい感じがあり、そこがちょっと残念でした。一番上の難易度だと最後のほうは敵から一発受けると即死なのでベルベットのブレイクを使い続けるゲームになってしまい単調になってしまうのも評価を下げてしまった要因の一つにあります(ただへたくそだっただけだという説もある)。しかし今回は全体的に秘奥義がカッコよくかつテンポがよくてそこはとても評価高いです(むしろテイルズはそこさえ良ければいい感じまである)。エレノアちゃんの第三秘奥義は打つ度に「信念を込めた旋風!」って一緒に叫んでました。後、歴代テイルズの秘奥義を使ってくれたりしたところは、ファンにはとっても嬉しかったです。

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エレノアちゃんがロストフォンドライブ打つ度に興奮していた私

 

そしてキャラクター、これは今作完璧です。というかエレノアちゃん超絶可愛い

以下エレノアちゃんの可愛い点挙げます。

まず自分の力が足りず全てを救いきれなくて泣いちゃうエレノアちゃん可愛いし、そのあとベルベットに負けて必死にスパイになろうとするも全然嘘がつけないエレノアちゃん可愛いし、自分が信じてきたことが信じられなくなった時も本質を見失わず強く生きようとするエレノアちゃん可愛いし、服脱いで傷跡を見せようとするエレノアちゃん可愛いし、ライフィセットを猫可愛がるエレノアちゃん可愛いし、男に言い寄られても全然気づかなくてすげなく断るエレノアちゃん可愛いし、ちょっとミーハーなエレノアちゃん可愛いし、くるくる回るモーションのエレノアちゃん可愛いし、ちょっとカッコいいエレノアちゃん可愛いし、恥ずかしがるエレノアちゃん可愛いし、エレノアちゃん可愛かったです。

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可愛い

エレノアちゃんだけでベルセリア100点あげてもいいんですが、ほかのキャラもなかなかにいいキャラしてました。ベルベットはエレノアちゃんとライフィセットが仲良くしているのを見ていちいち嫉妬しててほっこりしたし、ロクロウはエレノアちゃんとの絡みがよくてカプ厨の血を騒がせました。また、ちょっと抜けてるマギルゥもよかったですし、死神の呪いという酷い呪いを受けながらもそれもすべて自分だと受け入れて生きるアイゼンもかっこよかったです。でもやっぱりエレノアちゃんが可愛くてエレノアちゃんがしゃべる度に幸せになれる最高のゲームでした。もしベルセリアにスクショを撮る機能があったらエレノアちゃんのスクショでいっぱいになっていたと思いますが、バンナムの陰謀でスクショをとることができず、またスマホで直接画面を撮ったら気持ち悪い顔した私が映り込んだのでやめました。バンナム許せん!

 

最後にシナリオですが、これも結構よかったです。とにかくベルベットがいい意味でヒールなんですよね。ヴェスペリアのユーリ君もヒールだったんだけど、あれはあくまで義賊なんですよね、道徳は犯しているんだけどあくまで人のためっていうのが下地にある。今作のベルベットは自分の目的のためなら、多くの人を犠牲にするし、街を焼くし、他人を殺します字面だけ見ると相当ヤバイやつなんですが、これが「個より全」を理とするアルトリウス達と対比するとすごく魅力的に見えるんですよね。てか、アルトリウス君の理想とした世界って完全に”ハーモニー”の世界ですよね。社会性、合理性を突き詰めると人の意志は不要となるという点で。

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極度に社会性を突き詰めた後の世界を描いた作品。これもおすすめです。

どんなに絶望しても、自分がやってきたことがすべて無駄だったとしても、それでも折れない、例え世の中全員におかしいといわれても自分がやりたいと思ったことをして、生きて死ぬ。そんな風に生きられるベルベット達はうらやましいなと思いました。そして全員好き勝手やってる中で苦労しながらも自分の道を見つけていくエレノアちゃんは可愛いので必見です!

 

テイルズオブベルセリアは戦闘キャラシナリオともに歴代テイルズでも上位を張れる面白さだったと思います。そして何よりエレノアちゃんが可愛いので未プレイの方は是非やってください。