超大作SF「三体」のすすめ
最近話題になっている「三体」を読みました。一言スゴい作品だったので、簡単に紹介したいと思います。
今回はギャルゲー全く関係ないのであしからず・・・(ヒロインはお婆ちゃん!?)
元々中国語の作品で、日本語訳されたものを読みましたが、翻訳が丁寧で、特に違和感を感じませんでした。登場人物の名前が馴染みのないもので、なかなか覚えられませんでしたが、それも雰囲気が出て逆に良かったですね。
三体は中国が舞台のSFです。SFですが、文化大革命で壮絶な経験をした葉文潔の話から始まり、その濃厚な描写に引きこます。私は文革について詳しくは知らないのですが、これを機に勉強してみたいなと思わされました。
特に山をチェーンソーで開墾している場面で、知識階級である文潔が自然破壊について憂いているのに対し、その行為の是非について問われた作業員が、心の底から何を言っているのか分からない顔をしていたところが印象に残っています。自分が気づいていないだけで大局を見れば悪を行なっているかもしれないと文潔が気づいた象徴的なシーンだったと思います。これが後の文潔のとある行動に繋がってきます。
時代がとんでナノマテリアル科学者(漢字が変換できない)が主役になって物語が進むのですが、この辺はミステリっぽく読みやすかったですね。
また、ここででてくるVRゲーム三体がめちゃくちゃ面白いんです。太陽の位置がランダムに変化して、極寒から灼熱への入れ替わりが激しい世界で生きていくというゲームで、主人公が謎を解明していくわけですが、呪いから始まりこう来るか!っていう手法も現れ、これだけで一本作れるのではないかというレベルでした。
このVRゲームから物語の核心へとせまるわけですが・・・ここからはまさにSFといった超技術が繰り広げられ、それまでの伏線が回収されていくのが気持ちいいです。
話はここでひとまず終わりで、次回作に続くといった所ですが、十分これだけでも一つの作品として完成していましたね。
作品を通じて色々な登場人物が出てくるのですが、その中でも大史という警察官が非常にいい味を出していて、私は好きでした。話の内容から知識階級の人物が主なのですが、そんな中からこそ粗野な態度でありながら、核心をついてくる彼は目立っていましたね。最後のシーンの彼のセリフはどんな時でも前向きに現実を捉えられる彼の性格が出ていて印象に残っています。
三体はなんと三部作らしく、まだ邦訳はされていないようなので、英訳版を買うか非常に悩んでます。どうも2020に二作目も邦訳で出版されるようなので、そこまで待ってもよいかも?
『Summer Pockets』はkeyの終わりと新たな始まりの物語である。
妄想記事かつ、サマポケのネタバレを含みますので、未プレイの方はご遠慮ください。
そして最初に謝っておきます。ごめんなさい、許してください。本当にSummer Pockets面白かったです。
『Summer Pockets』はこれまでのkeyの終わりと新たな始まりの物語である。
この夏、ある鍵っ子は鳥白島に訪れる。
彼は島の風景やBGMを聞きながらどこかデジャブを感じている。
彼は鳥白島で、遊んだり、冒険をしたり、時には恋をしたりして楽しい夏休みを繰り返しすごした。それは本当に楽しく、どこか懐かしい夏休みで、彼はどんどん帰りたくなくなっていく。
彼はある時、しろはという女の子と恋をする。彼女と狸陰湿すぎるなどと仲を深めていく、そんな中だーまえが現れる。だーまえの話だと、どうやらしろはは遠くない未来死んでしまうらしい。ああなんてことだ、こんな可愛い女の子にこんな残酷な運命が待っているなんて、と彼は思う。
でも彼は知っている。きっと光の玉を集めれば、こんな過酷な未来も変えられると。
しかし、事態はそんな彼の予想を置きざりにして、急速に動き出す。
だーまえは過去に遡り、あの楽しかった夏休みの存在をなくすことと引き換えに事態を解決しようとしたのだ。
彼は叫ぶ、終わらないでくれ!もっともっとあの00年代のkeyのギャルゲーをやりたいんだ!と。だが彼の声は届かない。
―夏休みは終わりだ。
歴史が改変され、あの楽しかった夏休みはなかったことになった。彼は鳥白島にもう一度赴く、しかしそこにはかつての楽しかった夏はなく、彼はそこで死んだ祖母の蔵の整理をすることとなる。
そこで彼は驚く。何故か彼は蔵の整理ができたのだ。だがそれもそのはずである、蔵の中にしまわれていたのは、かつて彼が愛したギャルゲーの欠片たちだったからだ。
「これはAir、これはリトルバスターズ!、これはKanon・・・ふふ懐かしいな」
蔵は急速に整理されていく。夏休みも終わりに近づき、蔵の整理も終わりのめどがつく。
彼は鏡子さんに蔵の整理が終わりましたと報告する。すると驚くべきことに、鏡子さんは、「ではこれは全て捨てましょう」という。
彼は思った、ああやっぱりこれでkeyは終わりなんだと。
その時、存在が消えたはずのだーまえが彼の前に現れる。声は届かないし、彼自身その存在がどういう存在なのか理解しきれていない。ただ彼は、あのとき感じたまぶしさを思い出したのだ。
夏休みは終わった。あの記憶は素晴らしいものだった。
でも―次の夏休みはもっと楽しいものになる。
Summer Pockets感想
歩き続けることでしか届かないものがある―
『Summer Pockets』、オールクリアしましたが本当に素晴らしかった。シナリオライターが新しい人だったり、いたるがいなくなったりと色々ありましたが、keyの名に恥じぬ名作だと思います。Airのような雰囲気を持ち、CLANNADのような家族愛を描いて、リトルバスターズ!のような瞬間的に感動する要素もあり、00年代key作品の良いところを詰め込んでうまく調和がとれているという風に感じました。
雰囲気、台詞回し、個性的でどこか暖かいキャラクター達、印象的なフレーズを持ったOP・ED、そして感動的なシナリオとどこをとっても良く、この作品をプレイできて本当によかったとそう思います。そして、そんな小賢しい理屈を抜きにしてとにかく泣けるんです。シナリオが、CGが、演出が、声優の演技が、BGMが、挿入歌がすべてが私を泣かせようとしてくるんです。この感想を書くにあたっても何度か読みなおしてその度にぼろ泣きしました。ああそうだよ、泣きゲーってこういう感じだったなと懐かしい感じすらしました。こういう作品が出るからまだまだギャルゲーを卒業できないんだ・・・。
ここから先はネタバレになるので、未プレイの方はこんな感想を読む前に絶対にプレイしてみてください。
今回は個別ルート毎の感想残します。
蒼ルート
蒼ちゃんは本当にちょろかわでしたね。蒼ルートだけは原画がつばすということもあり、普通のエロゲーをやってる気持ちになりました。蒼の蒼姦シーンみたかったです(ノルマ達成)。
勿論、蒼のむっつりすけべなシナリオもとても楽しく読めたのですが、姉妹の愛や大切な人を失う悲しみ、そしてまた出会える喜びを感じられ泣けるルートでもありました。
無茶だと分かってても藍ともう一度話したいという気持ちから、七影蝶に触れ続ける蒼とそれを見守る羽依里。これ私なら何をしてでも蒼が七影蝶に触れされるのをやめさせようとすると思います。だって好きなのは今を生きてる蒼なんだから蒼が眠りについてしまったら意味がないと思うから。でも羽依里はとめなかった。過去と向き合うためにはそれが必要だと思ったから、結果蒼は眠りについてしまったけれども、つかの間でも藍と会うことができて過去を清算できて心の底から笑うことができた。その選択はなかなかできることではないし、これが人を真に思う心なのかと感じました。
エピローグ、眠ってしまった蒼を再び起こすために今度は羽依里が蒼の七影蝶を探し、ラストシーン蒼は笑顔で目が覚める。このシーン一体何年後の話か分かりませんし、この後もしかしたら羽依里が眠りについて無限ループになるかもしれない、ただ今度こそ笑顔で夏を一緒に過ごせるようになっていることを願わずにはいられませんね。
〇ルートメモ
蒼ルートは七影蝶に対しての補足ルートであるとも言え、次のことが分かります。
・七影蝶は記憶の残滓
・七影蝶に触れると記憶を取り込むことができる
・七影蝶から記憶を取り込むと記憶の整理のための睡眠時間が増え、取り込みすぎると記憶が七影蝶となり溢れ出てしまう=自分の核となる記憶が体から抜けるので永遠の眠りにつく
最後、眠りについていた蒼が起きるわけですが、これは藍の時と同様に主人公が蒼の七影蝶を探し出して蒼に戻したと考えるのが自然ですね。でもこうなると次は七影蝶を取り込みすぎた主人公が永遠の眠りについて無限ループしそうですね。無理しなければ大丈夫なんでしょうか。
鴎ルート
鴎ルートはalka、pocketを除けば、4つのルートの中だと一番好きだったかもしれません。最後の最後までミスリーディングに引っ掛かって(それこそキャリーケース開けて初めて理解した)、理解が追っつかないまま感動をぶつけられたのでぼろ泣きしました。
鴎は多分もう寝たきりで自分の体で外を歩くことはないでしょう。鴎がかつて見た夢、昔の友達を驚かすことはもう叶わない。鴎の夢を羽依里が引き継ぐわけだが、もう鴎が死んでしまっていたら羽依里が今やっていること(海賊船作り)は全部無駄かもしれない、でもやる。その感情ってとても尊いものだと思う。自己満足でもなんでもやらなければ区切りがつかないことってある。
―歩き続けることでしか届かないものがあるよ
海賊船が完成し、帆をはり沢山の読者が思い出を共有したとき、再び鴎が現れる。頑張ったから、歩き続けたから、再会できる。こんなに素晴らしいことはない。私はこういう頑張って頑張って報われる類の話に弱くてすぐ感動してしまうんですね。手紙を1通1通書いて送って、懐かしさから300人もの人が鴎に会いに来るところはぼろ泣きしてました。
最後満足して鴎は旅立ってしまうが、また翌年再会します。再会したときの鴎は生身の体を持っているわけではなさそうだが、想いの結晶が鴎を形作り夏毎に出会えているのだろう。未来はないかもしれないけど美しい。そんなルートでした。
〇ルートメモ
わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
この解釈は諸説ありますが、人間の意識は現象であり、様々な人間の意識の複合体としてこの世界に存在していると解釈しています。これは大乗仏教の考え方とも似ていますね。
さて、鴎は七影蝶となって島にやってきます。蒼ルートから七影蝶は悔いを残して死んでしまった人間の記憶の残滓であると言われていますから、この時点で鴎は死んでいると考えられます(作中でも長い眠りについたと言われている)。何故鴎が現世に顕現したかですが、これは主人公が過去に鴎に向けて手紙を送ったことがあり、この繋がりから七影蝶が主人公に幻を見せたのではないか。
どうも意識が集まると存在が構築され、思いが世界を構築するらしい。これは羽未の存在からも言えます。
ならば鴎の母親と羽衣里しか認識していなかった鴎という存在が、多くの昔の友人(読者)が集まることによって意識が集まり鴎が再度現れたというのは分かりそうなものである。
最後の七つの海を越えてあなたに会いに行くについてだが、これは羽未が時空を超えるときにも言っている台詞である。どうやら七つの海はキーワードらしい。
七つの海はそのまま捉えれば現実世界の全ての海を指しているように思える。それだけ大きな道のりを越えてきたともとれるが、何か仏教的な意味がありそうな気がする。九山八海は海の数が違うし、うーん。誰か得意な人教えてください。
紬ルート
紬ちゃんメッチャ可愛いくないですか?私は1日1回むぎゅっ!を聞かないと生きていけない体になりました。
紬ルートは、はじめからいなくなることを分かっているけど、だからこそこの1回の夏休みを全力で遊ぼうという話なんだが、これだけの話がとにかく良かった。どこかの感想でその辺の道端に落ちている雑草を滅茶苦茶うまく調理してるっていうのを見ましたが言いえて妙だと思います。本当にすごい普通にボーイミーツガールして遊んで恋してそのあと離別があって、再会する・・・そんな普通のお話なのに心をガンガン揺らしてくるんです。
何故かって、毎日が本当に楽しそうだったから。灯台を掃除をして、パリングルスでベランダを作ろうとしたり(冷静に考えれば頭のおかしいやつですね)、みんなで星を見たり、お祭りに行って綿あめ食べて花火を見たり、ハロウィン、クリスマス、節分、バレンタイン・・・そして誕生日。本当に楽しそうで、羽依里も静久も島のみんなもいいやつで、だからこれで満足だろうと送り出すとき、やっぱりもっと遊びたい!別れたくない!となってしまう気持ちに凄く共感してしまうのだ。
途中から夏休みが終わった後のことを意識してしまって、紬が泣いてしまったり、最後の最後まで泣かないと決めていたのにやっぱり最後は何故この先の夏に紬がいないのかと泣いてしまう羽衣里とか見てたら、もう涙腺が緩んで仕方ありませんでした。
あと演出が完全に卑怯でした。最後の5000本のキャンドルでお誕生日を祝うシーンが(お盆の見送りを思い出すようで)すでに感動的なのに、止めに挿入歌で『紬の夏休み』が流れるわけですよ。正直こんな歌で!と思いつつもメッチャ泣きましたね。紬の楽しかった気持ちと、羽依里や静久への友愛の気持ちが苦しいほど伝わってきて、ダメでした。そりゃあんな歌聞いたら我慢してた羽依里君も泣きますよ。
エピローグで紬はどうやら羽依里たちと再会できたようです。これから先も楽しい毎日が想像できそうで、本当に幸せなエンディングでした。4ルートの中でもしかしたら一番ハッピーなルートかもしれないですね。
〇ルートメモ
神隠しは最後までやっても明言されていないが、以下のようなことが分かっている。
- ツムギが囚われている場所はしろはが能力を手に入れようとしていた場所と同じっぽい
- 前に進むかとどまるかの決断ができないと留まり続ける
- 灯台にはずっとなにに囚われていたのかも忘れてしまうぐらい長い時間そこにとどまっているものがいる(大量の蝶たち)
- 現実に戻りたいと強く願えば現実に戻れる
どうやら過去に囚われすぎると迷い橘のある場所に飛ばされるらしい。そして過去に戻りたいと強く願えば心だけ過去にとばせるようになるし、現実に戻りたい、過去ではなく明日を楽しみたいと強く願えば現実に戻れるようである。またどちらも選べなければ神隠しとして時の牢獄に幽閉されるらしい。
最後に紬が戻ってこられたのもの、ツムギという過去の思い出よりも、羽依里たちと過ごす未来のほうが大きくなったから出てこられたのではないかと考えられる。
ではそもそもなんでぬいぐるみが紬になったのかだが、これは本当にわからない。大切しているものに霊魂がやどるっていうのはよくある話だが、特に説明がないように思える。
しろはルート、Alka、pocket
本編である。しろはルート自体はそこまでもなかったが、つながるAlka、pocketsはぼろ泣きしました。あそこまで幼くならないと自分の本音を言えないほど、過酷な家庭環境で理性的に育たなければいけなかったうみちゃんに、幸せな家族3人での夏休みを過ごした後に待っている残酷な未来に、そして未来を変えるためうみちゃんがその存在をかけてとった行動に、うみちゃんへのしろはの想いに、もっともっと一緒にいたかったという想いに、もう涙せずにはいられなかった。ここまで泣いたのはリトバス以来かもしれない、この感想を書くのにもう1週やってもう一度ぼろ泣きしました。くやしい。紬のときもそうだったが、いくら1回の夏が楽しかったとはいえもっともっともっと遊びたかったはずだっていうのが凄くわかってしまう、それでもしろはのために満足だと言って去る。自己犠牲はダメなんだ、泣くんだ・・・それをあんなに小さな子供にやらせるのは残酷すぎるよ・・・。
でも夏休みは終わらなければいけないのだ。夏休みが終わったら宿題が終わってなくて怒られるかもしれない、退屈な授業を聞かなければいけないのもつらいだろう。でも夏休みは終わらなければいけないのだ。そして夏休みはまた来る、だから全力で遊べる、だから楽しいのだ。終わらない夏休みは自由という名の牢獄のようなものだと作中で鏡子さんは言っている。
しろはルートの構造は夏休みをずっと楽しんでいたい(しろは)vsもう夏休みはおわりだという(うみ)になっている。
しろはの気持ちも痛いほど分かる。死んでしまう未来が確定しているなら、過去に戻って楽しかった夏休みを繰り返したいと思うし、もっと戻って能力を得ることをなかったことにしようとすれば、羽未に会えなくなってしまうと思えばもう時の牢獄に引きこもってしまうのも無理ないだろう。
その点うみは大人すぎるぐらい大人だ。ただうみの場合はもう3人の夏休みを過ごせないわけで(羽未は過去に存在しない人間だからループするごとに存在が希薄になり、恐らくもうループしている夏休みに現れることはできない)、元の世界に戻ってもただただ辛い日々が待っているだけ(しかも山で崖から落ちてるからそもそも助からないかもしれない)だから根本解決しようというのは、ある意味逃避なのかもしれない。
pocketの最後、主人公は未来に忘れてしまったはずの思い出の欠片を見つけ、しろはに会いに行く。もしこの後主人公としろはが結ばれても、うみは産まれないかもしれない。だが願わくば、また3人でもっともっと楽しい夏休みを過ごすことをと思ってしまうのを止められない。
未来はどうなるかなんてわからないけど、歩き続けなければいけない。きっと楽しい未来が待っているのだから。そんな当たり前のことを思い出させてくれる本当にいいシナリオでした。
しろはルートの考察はまた次回にしたいと思う。時の編み人とか鏡子さんが何者だとか分からないところも一杯あるのだが、再プレイする度に涙が止まらなくて全然考察が進まないのだ。
というわけで長くなりましたが、今回はこんなところで。本当に素晴らしいギャルゲーをやれて嬉しかった。
【カッコよく生きるとは】金色ラブリッチェ感想
今回は金色ラブリッチェをオールクリアしたので感想残します。
ヒロイン全員金髪というキャッチーな作品であり、萌えゲーアワード2017の準大賞作品ですね。最近は流石に手当たり次第やっていくという時間がなかなかないので、こういう話題になった作品ばっかりプレイしており、新規開拓ができていなくてちょっと残念ですね。
玲奈→エル→シルヴィ→茜→リアと攻略しまして、玲奈、エルルート終わったあたりはクソゲーなのでは?と思っていたのですが、シルヴィルート終わってみて、シルヴィ可愛い最高!となり、リアルートで世間の評価に納得しました。
というわけで個別に感想載せときます(ネタバレ特に気にしてないので注意)。
玲奈ルート
とてもスタンダードなシナリオでしたね。とても母性に溢れる玲奈が可愛かったです。何事もバランスが大事というのがキーワードでしたが、主人公がとにかくカッコ悪いので玲奈と釣り合ってなさそうなのがなんとも。全てのルート通して玲奈ルートの主人公が一番カッコ悪かったですね。玲奈の母性を表現するためには仕方なかった部分もありますが、それにしても酷い。あと、付き合うきっかけが脱法ドラッグっていうのは純愛ゲーとしてどうなんですかね、サガプラさん(なおあのシーンはめっちゃエロかった)。
また、過去との決別のシーンで、投良、お前それで本当にいいのかとは思いましたね。メンタルの問題でピッチャーには向いていないことは確かなんでしょうが、お前そこは「確かに今はそうだがそれでも俺は投手をやる。二刀流としてメジャーであっと言わせてやる。」ぐらいは言ってほしかったです。何か小さく収まってしまったそんな印象を受けます。いや十分すごいんですけど、現実世界にもっとすごいのいるのがな。
玲奈の家族の話はちょろっと出てきてそのあと出てきませんでしたね。全体的に盛り上がりにかけていたので、その辺に触れてもよかったかなと。まあシナリオ構成上必要の少ない金髪キャラなのでこんなものでよかったのかも?
エルルート
エルルートはきっとシナリオライターが書きたいことは書ききったと思うんですけど、これもやっぱり盛り上がりにかけてたのが残念です。変にお涙頂戴されてもですが、盛り上がりそうな話を小出しにして特にそのあと何も触れない、みたいなのが多かった印象です。記者の話とか家柄の話とか、話を間延びさせるだけなら書くなよ!と思ってしまいます。特に騎士はやめて自分のやりたいことに打ち込むってそれシルヴィが許せばそれで済む問題なのかとかもやもやしてました。後このルートも主人公が完全に恵まれた環境を甘受して努力を放棄してるのが印象悪かったですね。
シルヴィルート
シルヴィルートはとにかくシルヴィが可愛かったので最高でした。シルヴィ可愛いよね、序盤中盤終盤隙が無いよ。お姫様+天然+知的無垢=最高の方程式が成り立ちますので、シルヴィは最高に可愛いと証明できます。そもそも知的無垢って完全に矛盾した存在ですよね、創作世界にしか存在しない、だからこそ可愛いですね、好き。最近割と現実に寄せたキャラも多かったりしますが、やっぱりこういうコテコテのヒロインキャラが可愛いですね、本当に。事故でファーストキスしてしまった後、口を離して主人公だと認識してもう一度キスしちゃうところなんて可愛すぎて机ぶっ壊しそうになりましたし、いつも笑顔なのに主人公の妹に嫉妬しちゃうのも最高にニヤニヤしました。ギャルゲーやってると机めっちゃたたくこと多いんですけど、これ自分だけですかね?
シルヴィと主人公は全然立場があってないですし、これはエルルートでもそうだったんですが、このルートでは主人公は立場の違いをなんとかするために努力するのがよかったです。
今がゴールデンタイム(モテキ)なのは間違いないです(このゲーム、リアルート以外3Pがあるのもそれを示してるのでは)が、それに甘んじてじゃあ見ていてつまらない。あれですよ、凄い可愛いくて器量の良い娘がヤンキーと付き合ってるの傍目から見るとなんだかなぁって気持ちになるじゃないですか、そんな感じですよ。それがなくて本当によかった。
これ偏見なので気分を害されるかもしれませんが、ギャルゲーをプレイするような人って、このゲームで言う金色じゃない人が多いんじゃないかと思います。少なくとも私はそうですので、自分みたいなのをシナリオの中で見ていたくないんですね。やっぱり自分に足りないものを持っている人を応援したいんですよ。だからすごい可愛くて性格も良くて位も高い女の子とつきあうなら、それに釣り合うような能力の主人公であってほしいし、そうでなければ釣り合うような志を持ってほしいと思ってしまう。
だから最後のシーンは本当によかった。シルヴィが好きだと気づいて、あまりの差にくじけそうになりながらも、自分のできるところから一歩一歩進んでいって、一先ず対等にダンスを踊れるようになる。これは文句なくカッコいいですよ、この後の彼等の未来にも希望が持てる終わり方でしたね。
リアルートの後に追加されるシーンでは、しっかり外交官になって忙しく働く姿が確認できますね。めでたしめでたし。
茜ルート
金髪ラブリッチェしないルート。茜ちゃん普通に可愛かったんですけど、シルヴィルートの前にやればよかったと切に思います。まさかリアルート攻略のために茜ルートもやらなきゃいけないとは思わなかったのだ。笑顔で無理して応援するシルヴィを見るのがとてもきつかったです。
話的には主人公君もイマを頑張って生きてこうと努力していく姿はよかったですね。それ以外は普通に普通でしたね、他の金髪さんルートと違って他のキャラがあんまりでてこないのが特徴的でしたね。ライターさんも違うのかな?
茜ルートの一番の特徴は茜ちゃん『を』金色にするということですかね。自分が金色になるわけではない。そもそも主人公は誰かをフォローするのに特化した人間である(メンタルくそ雑魚の投良君を甲子園級ピッチャーにしてることからもわかる)から、これは一番無理のないルートなのかもしれない。カミにゃんもそんなこといってましたね。
蛇足がほぼなく普通に普通なルートでよかったですね。サブヒロインルートとしては完成してるんじゃないでしょうか。
リアルート
設定がずるい。サガプラまたヒロイン殺してると思いましたね。いやはつゆきと金色しかやってないので他のゲーム知りませんけど。
改めて感想書こうと思うと難しいですね。ある意味シンプルで王道なルートで、全く他の道が考えられないので、シルヴィルートの時点で大体おわりまでの展開が見えてしまったのが問題でしたね。前提条件が詰んでるので、もうイマ(ゴールデンタイム)を全力で楽しむしか方法がないという。
ただ最期までカッコつけた主人公はやっぱりカッコよかったし、最期まで一緒に過ごせたリアは幸せだったでしょう。文句のつけようがないです。全部わかっててもあんなん泣きます、卑怯ですよ。
これ多分こういうゲームに慣れてなければもっともっと泣けたかと思います。恐らく最近ギャルゲー始めたぐらいの人はめっちゃ評価高いんじゃないでしょうか。
総括
全てのシナリオを通して人として生を受けたからには金色(=カッコよく、自分の思うまま)に生きなければいけないという主張のシナリオだったのかと思います。リアはそのトリガーとして必要な存在だったのでしょう。シルヴィをはじめとした超人達と付き合うためには必死になるしかない。一般人は他国のお姫様が学校にいたとして憧れは抱いたとしても付き合えるとか思わないでしょう。理系的に言うと活性化エネルギーが高いとも言えます(お前そのたとえ必要だったか?)。その障壁を超えるためには、強い説得力でイマしかないというしかない、イマがゴールデンタイムなのだと言わなければいけない。必死になるためには文字通り身近に死を感じなければいけなかった、それがリアであったというわけですね。
彼等の必死な姿を見て私ももっと頑張らなければ、カッコつけるため努力しなければと私も思わされましたね。勿論現実にシルヴィはいませんが、こういう風に思わせてくれるのもギャルゲーのいいところだと思います。多分本で読んだってこんな風には思わないですけど、可愛い女の子に言われたら説得力が違います。
物語の根底は分かりました。キャラは可愛いし、掛け合いは面白い、音楽もよかった、特にOP・EDは勢いがあって耳に残るいい曲だったし、設定も悪くない、コンセプトの『金色』を根底としてシナリオに統一感があって読んでていて違和感がなかった。
これでリアルートがなければいいキャラゲーだなという評価でしたが、必要なルートであったとはいえリアルートが重かったから純粋なキャラゲーともいいにくし、シナリオゲーとしては流石に使い古されたネタすぎて瞬間最大風速が弱い。総括して少し惜しい作品だなという印象です。
ただ今までの話全部覆すようですけど、全てをぶっ飛ばすぐらいシルヴィが可愛かったので個人的には大満足です。どんなゲームでも1キャラめちゃくちゃ好きなキャラができれば大体それでよいというところはあります。
というわけで、今回はこの辺で。長々と読んでいただきありがとうございました。では~
【SFと下ネタのマリアージュ】景の海のアペイリア感想・考察
久々に本気で面白くて、また睡眠時間が削られてしまいました。1日36時間にしてくれ。
というわけで、『景の海のアペイリア』の感想と考察を残します。
本作はAI、量子力学、タイムリープ、多世界解釈、クローン技術、VRMMO、シンギュラリティ、そして下ネタと私の大好きなキーワードが揃っており、そしてこれが面白いぐらいに密接に絡まり、最後に綺麗にほどける最高の作品でした。
上記のキーワードが好きな人は絶対に面白いと思うので、ネタバレを見ずに、プレイしそして感動・・・はしないかもしれませんが、何転もする世界観を楽しんでみてください。そして新たな価値観に出会えるはずです。
そんなものエロゲ―に求めてないという正論がありますが、普通のSF小説と比べて、図解が丁寧ですし、声がついているので分かりやすいという側面があり、これはエロゲーでしか表現できないと私は考えます。また難しい内容の後は、心底くだらない(最大級の誉め言葉)下ネタバトルが挟まりますので、箸休めにもいいかと思います。個人的に、この真面目な議論と下ネタのバランスが疲れなくて丁度よかった。
主人公は某SA〇のようなデスゲームに囚われるわけなのですが、その世界で主人公は精液をコストに発動する能力を所持しており、常にオナニーしながら戦います。多分未プレイだと意味わかんないと思いますが、下の画像みたいなノリが嫌いじゃなければ絶対面白いと思います。私は死ぬほど笑いました。
クッソ真面目な考察からのこの下ネタバトル(フルボイス)
以下本編考察とか(ネタバレ含む)
シナリオの感想ですが、構成上の問題で実は最後の三羽のシーンさえあればほとんど事足りてしまう(それまでにも沢山仮説が出てくるがそのほとんどが主人公の妄想)のはちょっと残念でしたね。シンカーの正体あたりまでは大体予想通りでしたが(ブックマンはちょっと予想外)、観測者のくだりは本当に予想もしてなかったので現実世界にウイルスが沸いた時点でぶわっと鳥肌がたちました。そこからは怒涛の展開でああここまでプレイしてよかったとそう感じさせられましたね。
とはいえ最後の展開には疑問に思う部分もありました。本作の最後では、アペイリアも助かって、ファーストの世界、現実世界でひどい目にあっていた女の子たちも救い、AIと人間(三羽)が共存しあう理想の世界を最後見せ、とても綺麗に終わっているわけです。ですが、これ綺麗に終わりすぎじゃないかなと初見で思いました。最後に至るまで散々話をひっくり返され続けてきたからそう思ったのかもしれません。また最後のシーン、登場人物が5人しか出てきませんでした。これは本当に現実世界なのでしょうか。EDの後、干渉縞が消えるのも気になります。
本編では、干渉縞の消失の理由は二つ考えられています。一つは多世界が存在すること、もう一つは量子がどちらの二重スリットを通ったか観測することにより、量子の性質が波から粒子に変化し干渉縞が消えることです。ではこれらについて考えられる可能性を上げてみましょう。
1.現実世界が多世界であることを示唆している説
これは上記前者の理由から考えられる説ですね。ファーストの世界はシュミレーションの世界なので一本道の単一世界でした。零一達が現実世界に受肉したことで、彼等には様々な未来が待っている(多世界)ということを示唆したとも読み取れます。
2.現実世界にも観測者がいることを示唆している説
本作では、基本的に多世界解釈を否定しているようですので、こちらのほうが優位なのではないかと考えます。ではここでいう観測者とは誰なのでしょうか。
(1)私たちプレイヤー説
ネットでちょっと調べましたがこれを推してる人が多いように思えますね。この『景の海のアペイリア』の世界は、私たちプレイヤーによって観測されましたという、製作者の遊び心という意見が多かったですね。
これについて我々の認識がゲームの世界に干渉しているということであれば、常に干渉縞は消えていなければおかしいと言うのと、そもそも干渉縞はブラックボックスである観測箱の二重スリット先でどちらに量子が存在するのか観測することにより消失するという話ですから私たちはそれを観測できているわけではないという問題があります。
前者については、本作は私たちの意志でもって読み進める読み物として確定した過去を参照しているため、『アペイリア』の時間軸では私たちは存在しておらず(=観測していない)、そのため干渉縞も消えないと解釈することができます。一方で後者については、作中で三羽が『ファースト』を観測した際に干渉縞が消え、零一が観測者の存在に気づくという描写がありますので、厳密には定義が違いますが一応この世界ではそういうものだと理解することができます。
ただ一方でこの世界では多世界の可能性を否定しきれてはいません。作中では、シンカーがタイムリープ後の時間のズレを元に多世界の可能性を提示し、零一はその現象は単一世界でも解釈が可能だとして話は進み、最後現実が仮想現実であったことから『ファースト』は単一世界であると断定しています。つまり結果論として『ファースト』は単一世界であったので上の理屈は通りますが、『現実世界』の多世界の可能性は否定しきれませんので、上で言った理屈は厳密には通らず少しの疑問を残す回答となります。
(2)現実世界の更に上位世界の人間説
もし多世界解釈を否定するとすれば、通常の方法では干渉縞が消えるわけがないので、やはり上位世界の人間の存在を疑ってしまいます。ただこれは作中で怪しいキャラがいませんし(あえて言うなら、最後に唐突にゴミがついてると主人公の頭に触れた久遠君が一番怪しい)、何より後味が悪いのでできれば考えたくないですね。
(3)実は現実世界に受肉できたというのは勘違いでやはり仮想現実にログインさせられていた説
(2)と同様に多世界解釈を否定するならば、干渉縞が消えるのはシュミレーション仮説が採用された世界であると考えられます。
また、あまりにも現実世界に受肉した後の物事がうまくいきすぎてます。都合よく遺伝子研究所で受肉し、零一と過去にシュミレーション上とは言え肉体関係のあった三羽を使って殺そうとさせ、そのあともいくらアペイリアが万能選手だからとはいえ何不自由なく生きています。普通にシンギュラリティに対して強い警戒感を持っているなら、受肉した瞬間速攻焼却処分を試みたり、そこからたとえ脱出できても常に追われるような存在になりそうなものです。
ではなぜそうならなかったか?最後現実世界にログインしようとする零一をなんらかの方法で別の仮想現実にログインさせ、三羽を送り込みそこが現実であるというそれらしい説明をさせる。零一の目標はアペイリアの生存であるから、アペイリアが破壊されようとしなければその現実に疑問を持たない。送りこまれた三羽も現実世界では碌な役割は与えられないし、AIとは言え自我を持ち、恋をした零一と一緒に過ごせるならそこが仮想世界でもいいと考えたのかもしれない。そして、シンギュラリティは現実に影響を及ぼさなければ問題ないと考え、あとはその空間で自由に生きさせる。というストーリーがあったのではないでしょうか。
完全に妄想ですけど、まあそれはそれで幸せなのかなとも感じます。認識しているそこが現実ですから。
ここまでいくつか可能性をあげてきましたが、どれが正解なのかはっきりとしたことはわかりません。ですが、最後の仮想現実にログインさせられている説をここでは推しておきたいと思います。やはり綺麗に終わりすぎなのが気になるのと、最後のシーンは希望をいただかせる演出ではなく、まだ終わってないぞという演出であるように感じたからです。少し後味が悪い展開ですが幸せであることには変わりありませんので、ハッピーエンドなのかと。認識できなかったら仮想現実も現実ですよ、間違いなく。
話は変わってキャラについてですけど、ダントツでアペイリアが可愛かったですね。特に指を挟んでキスするシーンがめちゃくちゃ良かったです。尊い。他の女の子もよかったんですが、話の途中ということもありイマイチ寄り道感が拭えず感情移入がしきれませんでした。
その点最後に全部持って行ったといってもいいシンカー君は凄い良かったです。ただそれだけに、シンカー君の心情を考えるときついものがあります。あの最後の瞬間を迎えるまでにどれだけの苦悩があったか、本当は零一になりたいのになれない、存在が矛盾している。一からやり直したらまた全然違う感想になりそうですね。1週目は零一を応援しているけど、2週目はシンカーを応援したくなりそうです。
長くなりましたがこの辺で感想〆たいと思います。
久々に自分の好みにフィットした作品に出会えて幸せでした!