マダツボミの観察日誌

ギャルゲーマーによる、ギャルゲーやラノベの感想、備忘録とか

スポコンものの最高峰――蒼の彼方のフォーリズム 莉佳・明日香ルート感想

 前回の続きで『蒼の彼方のフォーリズム』の感想書いていきたいと思います。

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 一通りプレイし終わった後の感想としては、ぬほど面白かったんだけど、後もう一声あればもっと最高だったのになっていう感じです。これはサクラノ詩をやった時にも同じようなことを感じました。両方とも続編が出るみたいなので、それに死ぬほど期待しています。

  ここで、批評空間の感想でまさに私の心情を代弁してくれているものがあったので引用させていただきます。*1

メインディッシュ楽しみにフルコース頼んだら、前菜からおいしくて「やばい、メインディッシュ期待過ぎる!」と思いながら食べてたらデザートが出てきて困惑する感じ。「おいおい」と言いたいが料理はそこそこうまかったので微妙に文句もいい辛いから困る。そんな作品。

 明日香ルート、真白ルート、みさきルートと文句のつけようのなく面白く(莉佳ルート?)、それだけにグランドフィナーレがあっさりしすぎてたのが残念でした。個人的にはやっぱり晶也が飛んでヒロインズと試合したり、真藤さんとバチバチ試合したりする展開を熱望してました。もしかしたら、蒼の彼方のフォーリズムはギャルゲーでなく違う媒体の方が面白い素材だったのかもしれません。恋愛要素も勿論良かったんですが、それ以上にフライングサーカス(以下FC)の試合展開がやっぱり熱かったので、そこを前面に押し出せるような媒体、例えば漫画とかであればよかったのかもしれません。とは言え、透き通るような青い空に二筋のコントレイルが流れていくCGは芸術的で漫画では表現できないし、また、声が付いたことによって恐ろしいほどの破壊力を持ったシーンもあり、やっぱりギャルゲーである必要があったのかなとも思います。アニメだと尺がどうしても足らなくなりますしね。

 前置きはここまでとしまして、各ルート感想書いていきたいと思います。

 個人的には、明日香ルート>>みさきルート≧真白ルート>>莉佳ルートの順で好きでした。感想をちょろちょろ見てるとみさきルートの評判が良いみたいですね。

 

 莉佳ルート感想

 莉佳は完全にエロ枠でしたね。共通ルートから、着替えを覗かれたり、スカート降ろされたりとお色気要員として働き、個別ルートに入ってからも積極的に主人公を誘惑したりと、莉佳ルートやってるときだけ別ゲーやってる気分でした。やっぱり、他校のキャラは使いにくかったんですかね・・・?正直みなもちゃんの方がヒロインとしては使いやすかったんじゃないかなあとすら思います。

 一応ライバルキャラとして、この手のスポーツ漫画ではありがちなラフプレイをすると選手、霞が出てきて話が展開していくんですが、このシナリオに限ってはおまけでした。莉佳との試合中に霞ちゃんが漂白されていくんですが、明日香ぐらい突き抜けたキャラが「FCって楽しいよね(威圧)」って言って漂白していくんならまあ分かるんですけど、莉佳ちゃんはそこまで純粋キャラというわけでもないんで違和感があり、ご都合主義感をぬぐい切れませんでした。

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 うるせぇ

 と、なんとか散々文句言いましたが、お肉大好きで、唐揚げ頬ばって幸せそうにするところとか、メールで行間おいてだいすきですって書いちゃうところとか、ちょっと天然入ってるところとかとてもとても可愛く、莉佳ルートプレイ時は表情筋がゆるゆるでした。 後、最初のHで、莉佳ちゃんの感じてる演技は本当に嘘っぽくて、やっぱ声優ってすげーやと再確認しました。

 他が良すぎるので一つ落ちてますが、ギャルゲーとして抑える所は抑えて、かつヒロインの可愛さを十二分に引き出した良いルートだったと思います。

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抑える所は抑える莉佳ちゃんはギャルゲーヒロインの鑑

 明日香ルート感想

 明日香ルートは本当に最高でした、青春モノであれば間違いなく最高峰の出来だと思います。とにかくFCの試合展開が熱いし、恋愛描写もずばぬけてます。いつものようにあらすじ書くと、私の表現力では良さを伝えきれずに陳腐なものになりそうなので、すごく印象に残ったシーンを2つほど紹介したいと思います。

脳みそをくすぐる告白シーン

 まず、告白シーンですね。このシーン、ただ「晶也さん」と繰り返し言っているだけなのに体が震えました。夕暮れ時、CGの穏やかな表情と声優さんの名演技、wing of courage piano styleがあわさり、明日香の体の奥底から出てくる晶也への愛しさが伝わってくるようで、頭がくらくらしました。 

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明日香ルートプレイしてから毎日このシーンを聞いてる

 私はあまり声優さんにこだわりがない方なのですが、明日香役の澤田なつさんの声はすごい好きだってことに何度もこのシーンを聞いてて気づきました。澤田なつさんの声(演技)は、ふわふわしてて心臓の上の方をくすぐられるているようで、聞いていて脳みそが溶けそうになりました。電子ドラッグと言っても過言ではないかもしれません(強い表現)。上のシーンを見るだけでもこのゲーム買う価値があると思います。

熱い決勝戦

 2つ目に、やっぱり秋大会決勝のvs乾戦ですね。このシーンは本当に熱かった。夏の大会では力の差が歴然であったし、そのあとの練習試合でも圧倒された乾を、今まで積み重ねてきたものを一つ一つ発揮して倒す展開はもう最高でした。

 葵先生がみせたアンジェリック・ヘイローの応用による超加速で一点。

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 真藤さんとの特訓の成果の多角形連撃・ペンタグラム・フォースで一点。(お前声出しながら攻撃したら死角から攻撃している意味ねーだろっていうツッコミはあった)

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 部長、真白、みさきとの1vs3訓練の成果で乾の攻撃を完全に躱し、みんなで編み出したハイパーローヨーヨーで一点。正直この展開はズルイです、泣きます。決勝戦までみんなを連れて行ったっていうところがいいし、隙をついての上から重力を生かした高速垂直落下攻撃で一点というのは、初撃の乾の攻撃と一緒であり、これは乾を完全に技術面で上回ったことの証明なんじゃないでしょうか。

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 ただ技術で勝っても、乾のチートにより一気に追いつかれて、舐めプにより延長戦に。サッカーをしてたら野球だったと真藤さんは自分と乾の試合を評しましたが、勝戦は、剣道をやってたら相手がいきなり真剣を使いだしたといえばわかりやすいんじゃないでしょうか。

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 その後、バランサーを解放して互角の戦いになり、最後は晶也が見せた動きを再現して勝利します。

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 この展開一つ一つで、本当に感動しました。明日香たちがやってきたことに、何一つ無駄なことはなく、練習風景を思い返しながらプレイしていたら涙が止まりませんでした。

明日香について

 明日香の行動原理は、とにかく空を自由に飛びたい、蒼の彼方をみたいということなんですよね。負けたら悔しがりますが、本質的には勝負の結果にそこまでこだわっていないようにも感じます。結果論としての勝利というか、あくまで空を自由に飛ぶ手段を手に入れたら自然と勝ったという感じです。

 だから明日香は共通ルート最後の乾のバードケージによって真藤さんが完封される試合を見ても笑っていたんですよね。

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 晶也は自分の中の理想としていたFCが崩れていくのを見て絶望を覚えたし、みさきは自分が尊敬していた、目標であった最強プレイヤー真藤一成がなすすべもなく負けるのを見て恐怖した。でも、明日香にとっては、空を自由に飛ぶための一つの手段を示されているだけなんですよね、だから「凄いです!」という風になるんだと思います。勝ち負けではなく単純に技術を評価しているんですね。

 そんな明日香が勝負にこだわった試合が準決勝と決勝です。準決勝はみさきのために、そして決勝は晶也のために勝負にこだわりました。準決勝は力の差から圧勝でしたが、決勝で乾に道具の差から追い詰められたとき、バードケージを見ても笑っていた明日香が恐怖しました。相手が突然すごい動きをしだしたら凄い凄い、どうやってるんだろうってワクワクするのが今までの明日香であったのに、恐怖する。これは勝負にこだわった結果、負ける事が怖くなったからじゃないでしょうか。

 誰でも初めは楽しくやるんですよね、そうでなければ続けようとは思いませんから。でも段々と勝ち負けのことが頭をよぎりだして、以前のように純粋には楽しめなくなってくる。ここが一つの境目なのだと思います。晶也は純粋に楽しめなくなった、目標を見失った。でも昔の自分と同じである明日香をみて楽しさを思い出した。イリーナにぼこぼこに言われて精神が崩壊しそうになったときも、明日香が支えてくれたから前を向けました。

 支えてもらった分、今度は晶也が明日香を支えます。ありふれた言葉ですが、一人ではできないことも二人ではできた。そして勝ち負けを意識しても尚楽しく飛ぶことができたんだと思います。事実、みさきルートの明日香は実質一人になってしまったために、淡々とバードケージで自分の手の内をさらさないように勝ち進むという風になっています。これは、勝ち負けが頭によぎって純粋に楽しめなくなり、小さくまとまってしまった結果ではないでしょうか。

 晶也といる明日香は本当に魅力的な女の子でした。晶也じゃなきゃダメだった、なぜなら空を飛ぶ楽しさを教えてくれたのは晶也だったから。

『 空を翔た 君が笑った それだけ・・・だから高く遠くへ飛べる』

 まさに、OPテーマの通りなんじゃないでしょうか。

 明日香ルートの明日香は本当に可愛く、久しぶりにめちゃくちゃツボりました。明るく楽しく勝負事に勝っていくというタイプのキャラというのは、この手のスポコンものには多いと思います。でも明日香はそれだけじゃないんですよね、しっかり弱い部分を持ってる。でもその弱い部分が明日香の良さを出しているし、そこをフォローできるのが主人公であるとというのがすごく良かったです。

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 繰り返しますけど、本当に明日香は可愛く、シナリオも熱い展開、心揺さぶられる恋愛要素と完璧で素晴らしいルートだと思いました。

 おわりに

  この辺で今回は終わりにしようかと思います。みさきルートについては後日別途書くかもしれません。みさきルートはシナリオとしては、すごく良かったんですが、明日香が感情を失ったFCマシーンみたいになってて読んでて辛くなりました。明日香ルートの後にみさきルートやったのがすべての間違いだったんや・・・

 

参考

*1  http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=19232&uid=TASCAM