マダツボミの観察日誌

ギャルゲーマーによる、ギャルゲーやラノベの感想、備忘録とか

『喫茶ステラと死神の蝶』希、栞那√感想

 あけましておめでとうございます。

『喫茶ステラと死神の蝶』希、栞那√クリアしてきたので早速感想をば。

希√感想

f:id:saijunior2002:20200101113801j:plain

 まず、希√感想です。共通の希ちゃんは本当に可愛く、ナツメの次に好きなキャラだったんでした。主人公との夫婦漫才はニヤニヤしましたし、明るく元気な姿は元気づけられました。幼馴染っていいですよね、私がギャルゲー界で一番好きなのは幼馴染です。

 

 ですが、どーしても付き合ってからの希ちゃんが受け入れられなかった。

 重いよ、重いんだ君・・・、他の女の子に嫉妬するところまでは耐えられたんですが、幼稚園児のようにギャン泣きするので、こっちも真顔になってしまいました。『RIDDLEJOKER』の羽月の時にも感じましたが、重いキャラは苦手かもしれねぇ・・・

 ただこのルートもCGは良かったです。お気に入りはやっぱりナイトパレードの一枚ですね。主人公に手をつながれてちょっと驚きつつも、恥ずかしさと嬉しさをにじませる表情は最高でした。私も思わず画面の前でガッツポーズしましたね、よくやった主人公。

f:id:saijunior2002:20200105134310j:plain

アオハルか!

 シナリオは最後うまくまとめたようで、ちょっと納得が難しい部分もありました。

 主人公は蝶(=力)を取り入れやすく強大になりやすい魂を持っていて、希は封印された強い赤磐の魂を引き継いでいる。この二人がくっつくと希の封印された魂が解放される若しくは取り込まれてしまう恐れがあるから、神が引き離すために主人公を殺そうとした―――

 そこまでは、いいんですが、最後赤磐の魂を浄化した後、主人公が神の裁きから逃れる道理がなくないですか?

 作中だと希とくっついて幸せになったから、主人公の魂の質が改善されるから解決---という話でしたが、栞那√から察するに、主人公の魂は前前前世から望んできた普通の幸せ、好きな人と結婚して、子供ができて、家族で笑い合って暮らしていくことを達成したときに初めて満足するんじゃないでしょうか。また、赤磐の魂との決別のシーンの前と後で主人公の希への想いが変化したとは思えず、何をもって神が見逃したかが不明確でした。すべては神の裁定次第と言えばそこまでですけど、ちょっともにょもにょしますね。

 総じて、普通のゆずソフトですかね。シナリオはあくまでキャラの可愛さを補助するものと捉えれば、あまり深く考えるべきものでないかもしれません。

栞那√感想

f:id:saijunior2002:20200105140411j:plain

 続けて、栞那√感想です。栞那さん、あまりに可愛いです。これは世界取れます

 共通は文句なく良く、どんどん彼女を好きになれました。気安くエロネタでからかってくるとことか、逆にそれで自爆するとことか大好きです。明るいけど、嫌味がなく、誰にでも優しくて、接しやすい・・・流石メインヒロイン、隙が無い。

 CGも良かったです。オムライスを食べさせてくれるシーンは、セリフに合わせて表情がコロコロ変わるのと、顔アップでこちらを見つめてくるような構図が相まって、本当にそこに栞那さんがいるような錯覚を覚えました。膝枕するシーンのちょっと恥ずかしそうだけど、愛おしそうに主人公を見つめる所なんてキュンキュン(死語)来ました。

 また、蝶を天界(?)に送り返すシーンは幻想的だったし、観覧車で対面するシーンは切なさと愛しさがダイレクトに伝わってくるようで、見てるこちらも心が揺さぶられました。ステラの前でキスするシーンなどは、唇のリップの香りまで感じられるようでした。とても良い!流石センターヒロインだけあって、CGの作り込みが他キャラとは違いますね。

 ただ中盤、死神関係でのシリアスがとってつけたような展開だったのが、少し残念でした。栞那が消えて、主人公と栞那の因果も判明し、諦められなかった主人公がもう一度過去をやり直そうとし、それを栞那が諭して元の世界に戻らせる―というところまではまるで泣きゲーのようでしたが、そこから普通に蝶の力で栞那が復活して「なんじゃそりゃー」ってなりました。蝶の力がいくらなんでもご都合主義だし、消えてからの復活が早すぎるし、ギャグシーンになってるから悲しみにも浸れないし、感情の置き所を見失いました。「物語を展開させるために入れた死神設定を、無理やり清算させるためだけに入れられたシーン」のような気がしてなりません。もうちょっとなんかあったやろ!

 ただ終わりは良かったです。主人公と父親の関係は他2ルートやったときは、なあなあで終わっていましたが、そこをしっかり回収していったのは偉かった。死神として幸せな来世を約束したのに、報われなかった主人公の前世を見てきたからこそ、栞那は家庭の在り方に悩む主人公に気づくことができたのではないでしょうか。毎年娘の誕生日を主人公の父親も含む3人で祝うというのは他のルートの主人公ではできなかった。エピローグの主人公は本当に幸せそうで、読んでるこちらも幸せになれました。

f:id:saijunior2002:20200104173059j:plain

最後のシーンはとてもほっこりして幸せな気持ちになります。

 ちなみに、Hシーンも凄い良かったです。最初のシーンで恥ずかしくて顔を覆うシーンとか、背後から乳マッサージとか、スカートをたくし上げるシーンとか、完全にツボでした。画面の前で「こいつ分かってるな・・・」ってしたり顔で呟いてましたね。

f:id:saijunior2002:20200105115710j:plain

 歴代ゆず作品でも同棲初日からシャワオナしたキャラはいない

 総じて、中盤シナリオに疑問符が着くところもありましたが、終わりよければすべて良しとも言いますし、栞那さんがあり得ん可愛さだったので全部許されました。やはりキャラゲーはどこまでそのキャラを好きになれるかにかかっている・・・!

 

 というわけで今回の感想はこの辺りで終わりにしたいと思います。

 本年もよろしくお願い致します。

 

【失われた青春をもう一度】喫茶ステラと死神の蝶 ナツメ√感想

 クリスマス、だからかもしれませんが、なんで私はいい歳になってもまだギャルゲをやってるのか、ギャルゲに何を求めているのかということを、ふと考えてしまいました。

 エロが見たいだけなら画像は大量にネットに落ちているし、エロにストーリー性を求めるなら同人とかでもいいわけですよね。それで気づいたんですよ、私は自分が体験することができなかった普通の「青春」を追い求めてたんじゃないかって。

  何が言いたいかと言いますと・・・

 キャラゲーの老舗、ゆずソフト最新作『喫茶ステラと死神の蝶』ナツメ√が、まさに青春の一ページを追体験させてくれる、非常に素晴らしいルートでした。今までのゆず作品の中でも1,2を争う良さだったかもしれません。

f:id:saijunior2002:20191224225446j:plain

  何故そんなによく感じられたかは、主人公に死ぬほど感情移入できたことが大きいです。

 ゆずソフト作品にしては珍しい大学生の主人公で、彼は等身大の陰の者です。最低限の社交性を持っているけど、人と深く関わることを恐れている。一方で人と深く関わることにひどく憧れを持っている。街で知り合いを見かけても気づかれないようにスッとフェードアウトするとか、ろくに努力もしてないのに彼女を欲しがるとか、わかる、めっちゃわかるわってずっと言ってました。陰キャはめんどくさい生き物です。

 物語のはじめで彼と彼の友人が学食でたわいもない話をするんですが、その一つ一つが身に覚えがありすぎて、読んでて共感しかありませんでした。明確な将来のビジョンはないけど就職できるのかとか、普通に就職して結婚して子供を育てて暖かい家庭を築きたいという話に対して、それも最近は高望みだよなぁとか、そもそも恋人作れるのかなぁとか、私も大学生の時同じような話をしたなぁと。

 あと、この主人公クソ童貞くさいところもよいですね。バイト先で一緒になった女の子と教室であっても、思わずちょっと離れた先に着こうとするとか、女の子の名前を呼ぼうとするとドモるとか、初エッチのときにいきなりパンツを脱がせようとするところとか。冷静にキモいんですが、だからこそ、めっちゃこの主人公の行動が理解できてしまう。

 

 四季ナツメというキャラについて語りましょう。彼女は陰キャが想像する最高に可愛い現実の女の子を具現化した存在です。二次元創作物でよく出現するコテコテの可愛いキャラは可愛いですけど現実には絶対いないでしょう。知的無垢などその最たるものです(めっちゃ可愛いけど、その人格が構成されるまでのストーリーが全く見えない)。四季ナツメは、美人だけど、事情から陰キャで、うぶで、でも話してみたら気さくで、一緒にいたら楽しいタイプの女性です。このキャラが構成されるまでのストーリーが想像できるし、しっくりきた、より現実的な女性だった。だからこそ、よりストーリーに感情移入しやすかった。

 

 ナツメ√は主人公とナツメの変化の話でした。彼等は両方陰キャで、足を前に踏み出してもいないのに、最初から勝手に決めつけて諦めてる。この作品で言えば魂が弱った状態です。

 そんな主人公も劇中、事故にあったことで、変わらざるを得なくなります。陰キャは何かしら理由をつけて変化から逃げがちですが、逃げると死ぬわけですから変わらざるを得ない。物語最序盤の選択肢が印象的です。

f:id:saijunior2002:20191224232410j:plain断ると死ぬ

 主人公が変わったことで、ナツメも変わります。喫茶ステラを盛り上げるために、主人公なりに一生懸命努力し、それを見てナツメも自分にできることを見つけていきます。

 そんな中、ナツメが主人公と交流を持つのは酷く当たり前のことでしょう。そして、お酒を飲みに行ったりしながら付き合いを深め、惹かれあっていくの至極当たり前のことだと思えました。兎に角ストーリーが「自然」でした

 1個1個は小さなシーンだけど、その積み重ねに意味があって、だからこそ、初めてお酒を飲みに行ったときに子供っぽくなるナツメが本当に可愛く見えたし、初日の出を一緒に見た時にふと唇が気になってキスをしてしまうシーンでは死ぬほど悶えました。「自然」だからシナリオをスッと受け入れられたし、自分が体験しえなかった「青春」をシナリオを通して受け入れることができました

 そして、完全に没入した状態で見るナツメが只管に可愛いんですね。恥ずかしくなってぐぬぅ~する顔とか、ちょっと親しげにばーかっていってくるところとか、酔ったら可愛くなるところとか、大人っぽく見えるのに実は子供っぽいところとか、仲良くなってから積極的なところとかとかとか・・・本当に可愛いかった。可愛くて可愛くて可愛くて、もうナツメしか目に入らないっていうぐらい、ガチ恋でした。

・・・まあすぐに次のルートやるんですが。

f:id:saijunior2002:20191225190536j:plain

恒例のお気に入りボイス、罵倒が心地良い

 

 最初から最後までナツメ√は悪い所がありませんでした。良い、良い、良いと積み重ねて、最後に幸せな未来を夢見てエンディングと、これ否のつけどころありますか?いやない。

 ・・・と思って批評空間チラッと見に行ったら、あんまり評判よくないのでびっくりしました。やはりキャラゲーは相性なのか。

 

 ただ、私はプレイしてすごい幸せな気持ちになれたので、星5つです。いつも最高のギャルゲーを提供してくれるゆずソフトに最大限の感謝を。

 

ギャルゲーマーによる『なろう小説』のススメ②

 皆さんこんばんは!

 前回の紹介記事からなんと2年が経ってしまいました。

oceans-game.hatenablog.com

 光陰矢の如し、あれから『なろう作品』は飛ぶ鳥落とす勢いで順調にアニメ・ライトノベル界を侵食していますね。最早アニメ化・書籍化しているからといって信用することが難しいような環境になっています。  

 ススメ②ということで、今回もそんな群雄割拠のなろう業界の中で、面白かった作品を紹介できればと思います。

 では早速行きましょう!

異世界迷宮の最深部を目指そう

  1作品はこれですね、『異世界迷宮の最深部を目指そう』。通称いぶそうですね。これは絶対今後売れると確信しています。

異世界迷宮の最深部を目指そう 1 (オーバーラップ文庫)

異世界迷宮の最深部を目指そう 1 (オーバーラップ文庫)

  • 作者:割内タリサ
  • 出版社/メーカー: オーバーラップ
  • 発売日: 2014/08/06
  • メディア: Kindle
 

  そこら辺のなろう小説とは格の違う面白さで、タイトルで損している系の作品の一つだと思います。

 いぶそうは異世界迷宮で目を覚ました主人公カナミが、最愛の妹が待つ元の世界に帰るため異世界迷宮の最深部を目指すという話です。これだけ聞くと、まーたいつもの主人公最強ハーレムものかよって思うわけですが、この作品は違う。

 ありがちなステータス、アイテムボックス、敵を倒して経験値をためてレベルアップ、相手の能力が見れれる鑑定、全てゲームのようで面白く、一見能天気にも見えますが、所々から醸し出される作品の雰囲気はおどろおどろしい。キャラクター達は一癖も二癖もあり、みな裏を抱えています。主人公カナミは迷宮探索を進める中で、階層を守る守護者に出会います。守護者は恐ろしい力を持っているがどこか脆く、カナミは時に戦い、時に彼等の闇を解決することで階層を更新していきます。その中で世界の秘密が判明していき、カナミは自身の存在を問うことになります。

 この作品の良さは、その世界観にあります。悲しくも優しい、誰かが誰かを思う気持ちが重なりあって紡がれていく物語を是非体感してほしいと思います。

 かなり精神に負荷がかかる作品になっておりますので、用法容量を守って正しくお読みください。

嘆きの亡霊は引退したい 〜最弱ハンターは英雄の夢を見る〜

 2作品目は『嘆きの亡霊は引退したい』です。

嘆きの亡霊は引退したい~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~ 1 (GCノベルズ)

嘆きの亡霊は引退したい~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~ 1 (GCノベルズ)

 

  なろうに慣れた人であれば、「ああ、最弱とかいってるけど、結局判定できない異能力を持っていて世界最強でハーレム作る量産型のなろう小説なんでしょ?」って思うかもしれません。私はそう思いました。

 事実この小説の主人公であるクライ君はある種の異能力を持っていますが、決して異世界最強ものではありません。この小説は勘違い系ファンタジー小説です。

 クライは非常に運が悪く、何もしていなくても事件に巻き込まれます。そしてそれらを仲間にすべて押し付けます。この主人公ほとんど何もできないし、しないのですが、周りが勝手に彼の行動を解釈して、それが何故かなんだかんだうまくいってしまいます。そして彼の評価が上がり、どんどん彼は目標である引退ができなくなっていく―といった話になります。

 この絶妙にかみ合わない感じがこの作品の良さですね。主人公のクライはどうしようもないやつで、無意識に他人を煽るし、嫌な仕事を後輩の女の子に擦り付けるし、仲間の女性に多額の借金をして宝具(魔法の道具のこと)を買い揃えたりするのですが、何故か憎めないところも、この作品の味があるところかなと思います。

 あとやっぱりギャルゲーマー的にはヒロイン(?)が可愛いところもポイントですね(無理やりねじ込んだギャルゲーマー要素)。ティノが不幸可愛いです。

 作者の槻影さんの作品は全部読みましたが、文体も読みやすく、どの作品も少し、いやかなり癖があるので、なろう小説を読み飽きた諸兄も楽しめると思います。

 ライブダンジョン

 3作品目は『ライブダンジョン』ですね。

 https://ncode.syosetu.com/n6970df/

 この作品は、なろうではよくある「ネトゲの廃人がサービス終了のゲームに転移して無双する」という話の一つですが、主人公が変わっているという点と、戦闘の熱さの2点が良い点ですね。

 前者は多分に賛否両論があるところだと思います。主人公の努はとにかくクールというか、世界が自分にとって都合が良すぎることを認識し、常に一歩引いて現実世界への帰還を目指しています。ヒロイン(?)の積極的なアプローチを袖にして、逆にその気持ちを利用して目標であるダンジョンを攻略していく強さが努の魅力です。ただこの設定のせいでやり取りが淡泊になりがちなのがこの作品の惜しい所でもあるかなと思います。

 後者の戦闘の熱さはこの作品の売りです。『ライブダンジョン』はタイトルの通り、ライブ中継されているダンジョンを攻略していくという話です。主人公の努は元になったライブダンジョンというネトゲの廃人のため、ボスの行動内容やクールタイムを把握しているという設定ですが、現実世界となったライブダンジョンは一部ボスの行動に変化があり、それらに初見で挑む努たちが苦戦していくという塩梅です。努がヒーラーという補助職であることもあり、転移ものでありがちな主人公が一人で全てを倒すということはなく、仲間と連携して敵を攻略していくストーリーが熱いです。

 そして何よりもこの作品をおススメしたい理由は「完結」していることですね(なろうで一番大事な要素)。文字数も180万字と読み応えがありますので、いかがでしょうか。

ネタ枠

 なろう界を彷徨っているとたまに他の作品たちとの差別化を図るために、トチ狂った設定をもつ作品が出現します。そんな中で万人に面白いかどうかは別として個人的に好きな作品をいくつか紹介したいと思います。

セーブ&ロードのできる宿屋さん ~カンスト転生者が宿屋で新人育成を始めたようです~

 ネタ枠1作品目は『セーブ&ロードのできる宿屋さん』です。

 正直これをネタ枠にいれるかどうかは悩みどころさんなのですが、 割と一発芸的なところが多いので、ネタ枠に入れました。個人的にはかなりこの作品好きです。

 ストーリーはタイトル通り、ファンタジーな世界観でセーブ&ロードができる宿屋があって、そこに問題を抱えた宿泊客が訪ねてきて、『訓練』を受けることで問題を解決していくといった内容となっています。

 ただこの『訓練』というのが肝で、宿屋のマスターである主人公アレクはセーブ&ロードできる=死なないことをいいことに、異次元の課題を宿泊客に課します。具体的には体力をつけるために豆を死ぬまで食べる訓練や、高い崖からノーロープバンジーをする訓練などなど、アレクは至って真面目に当たり前のように言うのです。生き返ることは分かってもわざわざ自殺したくない客と、効率を求めるアレクの噛み合わなさがシュールで面白い。

 一方で殺伐としているかといえばそんなことはなく、話の血なまぐささと相反するように、雰囲気は明るくほのぼのとしています。そのギャップもこの作品の魅力です。

 一風変わった主人公最強物、疲れた時に読んでもフフっとなるのでおススメです。

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う

 ネタ枠2作品目は『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』です。

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う (角川スニーカー文庫)
 

 これ書籍化してたんですね、ビックリしました。角川は正気か?打ち切りっぽいですが、なろうで最後まで読めます。

 ストーリーはタイトル通り、自販機マニアが異世界転生して自動販売機になって迷宮を彷徨うというものです。書いてて思いましたが、意味不明ですね。ただ中身は結構面白いです。

 主人公は自販機なので当然言葉を話せません。使える言葉は「いらっしゃいませ」「またのご利用をお待ちしております」「あたりが出たらもう1本」。これらでコミュニケーションをとるさまはシュールで笑いを誘います。この手の作品にありがちな、すぐに人化するという手法をとらないのも好感度が高いです(スライムお前のことだぞ?)。

 主人公はどこまでも自動販売機なので、自慢のマニア知識を活かして様々な自動販売機に変化しながら、迷宮を攻略します。主人公は強すぎず弱すぎず絶妙なバランスで、物語を面白くしています。

 トチ狂った設定から意外とまともな話になっているので、普通の作品に飽きてしまった方は是非読んでみてください。ちなみに完結済みです(なろうポイント+100万点)。

トラック受け止め異世界転生ッッッッッ!!!!!熱血武闘派高校生ワタルッッッッッ!!!!!

  ネタ枠3作品目は『ワタルッッッ!』ですね。

 https://ncode.syosetu.com/n0484eh/

 本当にタイトル通りの勢いで駆け抜ける作品になってるので、心が疲れた時に読むとクスッと来ると思います。

 これも書籍化されたと聞いてビビってます。

魔法? そんなことより筋肉だ!

 ネタ枠4作品目は『そんなことより筋肉だ!』ですね。
 https://ncode.syosetu.com/n7236dp/

 なんとなく流れから分かってきたかもしれませんが、私はこういう頭が悪いお話が大好きです。

 この作品もほとんどタイトルの通りで、筋肉を鍛えぬいた主人公が強者を求めて世界を旅するという話です。ただこの作品は意外としっかり物語が進行していくので、ワタルッッッ!よりはお話としても読めます。

 何故かこの作品も書籍化、コミカライズされてます。コミカライズ版はコロコロコミックを読んでいた童心を思い出させてくれるので少しおススメです。

 

 

 というわけで如何だったでしょうか。少しでも興味を惹かれるなろう小説が見つかったのなら幸いです。まだまだ好きな作品はあるのですが、疲れたので今回はこれぐらいで!

『西野』という新ジャンルライトノベルのススメ

 異能で世界最強、近年『なろう』系として人口に膾炙された要素ではありますが、そんなありふれた要素でも書き手の表現一つでいくらでも調理できるんだなと感じさせてくれたタイトルがあります。 

  テイルズオブ西野、改め『西野~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~』です。タイトルからああいつもの奴ね、と思った方、ちょっと待ってください

 『西野』は現代日本を舞台とした、世界最強の異能力を持った西野少年のお話です。この一文を読んだ人は、「ああいつものなろう小説ね、異能力逆輸入型で世界最強してハーレム作るやつでしょ?知ってる知ってる」と思うかもしれません。

 確かに西野は持ち前の異能力で、マフィアを制圧したり、ヤクザに連れていかれた女の子を助けたりします。高校生でありながら六本木のバーでウィスキーを楽しみ、会話の節々からハードボイルドな雰囲気を醸し出します。最近の流行りからすれば、悪漢から女の子を異能で助けた後に、「ふぅ、このことは内緒にしといてくれよな?」とかハードボイルドに決めて、可愛いクラスの女の子と仲良くなったりするところです。

 ですが西野は違います。西野は決してブサイクではないが、断じてイケメンではない、フツメンでした。するとどうでしょう、ハードボイルドに決めている西野は一転勘違い野郎に成り下がり、ハーレム形成どころかクラスで虐めにあいます。果たして今まで異能力をもらった後に虐められた主人公がいたでしょうか?

 それでも、西野の異能力という背景を知っている読者からすれば、カッコよく見える部分もあるはずなのですが、作者のこれでもかというぐらいの悪意のこもった表現により、我々読者にも西野が勘違い野郎に見えてきます。これがじわじわ来ます。

 また、元々この作品はカクヨムに投稿されていたものですが、文庫になり、挿絵がついたことで、シュールさが増しました。普通のラノベであれば可愛い女の子や、主人公のカッコイイ戦闘シーンを挿絵にするでしょうが、『西野』は違います。西野の顔芸やカッコイイはずなのに勘違いオタクがキリトの真似して記念撮影したような戦闘シーンをふんだんに盛り込み、徹頭徹尾、私たち読者を笑わせてきます。西野のキャラデザが完璧すぎます

 そんな『西野』にもラノベにお約束の美少女たちが多分に出てきます。ただそこは『西野』、まともな女性はほぼ出てきません。西野の食事に自分の体液を入れるロリ、父親と近親相関したいファザコン女子、メンタルクソザコメンヘラ女子などなど、パンチが効いたキャラクター達が物語を彩ります。一番最初に出てきた金髪ビッチ女子が一番まともな人間に見えるとは誰が思ったでしょうか?『田中』のときもそうでしたが、この作者は変態を描写するのが上手いですね。こんな上げ方をしたのははじめてです。

 正直言って1巻2巻あたりは、流石に西野が可哀想で、読んでいて少しメンタルがやられそうになりましたが、爪はじきにされても全くめげず変わらない西野に段々と回りの人間も順応していき、3巻ぐらいからは頭のおかしいラブコメという感じなっています。どこまでも超然としている西野に勇気づけられる人もいるかも?

 最近の異世界最強ものに辟易しているラノベ読者は一度お手にとってはいかがでしょうか?きっとシュールな笑いがあなたを誘いますカクヨムで無料で読むことはできますが、『西野』は挿絵がついてパワーが増すタイプの作品だと思いますので、文庫版を読まれることおススメします。

『教育格差』備忘録

 今回は次の本を読んだので、自分の記憶整理のため備忘録として残します。

教育格差 (ちくま新書)

教育格差 (ちくま新書)

 

 日本の教育格差の現状を述べた新書ですが、読んでいて非常に胸が痛くなりました。

 読後の感想としては、今までの信じていたものが壊されると言うか、現実を突きつけられて目の前が暗くなるような気分です。本の帯の触れ込みと一緒ですね。『読後感は重いが、説得力は半端ではない。』

 

 本書では幼児教育から順に高校教育に至るまで、生まれた環境とその後の進路に相関があるということを、膨大な図表を元にして説明しています。

 この本では、高SES層(社会経済状態が高い層、ここでは大卒以上の両親の数、家の蔵書数、三大都市に住んでいるなど)の子供は低SES層(逆に社会経済状態が低い層)の子供に比べて、学歴レースで勝つ確率が高く、これはすなわち裕福になる(高SES層になる)割合が高いということを述べています。この結論に至るまでの細かい分析が本書の半分ほどを占めており、この結論の説得力を高めています。

 こんなことを言うと『別に学歴だけがすべてじゃない』とか『低SES層でも有名大学に受かる人もいる』などの批判をしたくなるのが低SES層の常ですが、本書ではこの辺の批判をすべてねじ伏せているのが恐ろしい。どのようにと言えば、データに基づいて『学歴と平均年収の間には相関がある。学歴が低くても年収が高い人も一部いるが、それがこの相関を否定する理由にはならない』であるとか、『生まれと学歴の間には相関がある。生まれが悪くてもいい大学に入る人も一部いるが、それがこの相関を否定する理由にはならない』といった風にです。

 ではこの教育格差をどうやって埋めていくか、ということを私は読んでいて期待していましたが、この本はどこまでも真面目で、現実主義であり、特効薬のようなものは書かれていませんでした。ただ最後の章にて、本書の提案が二つありました。一つにこの格差を明確に示すデータをもっと国、地方公共団体を通じて収集すること、二つに教育格差を教職での必修科目にすることです。とにかく現状をより把握して、改善案を模索しつつ、少しでもより良い形にしていこう!というわけですね。

 最後の章の中で私が印象深かったのは、平等と自由は両立できないということでした。文章で起こしてみると何を当たり前のことをと思わなくもないですが、確かにこれを私は自覚できていませんでした。本書の中では例として、ゆとり教育で土曜日が休日になったことにより、より自由な時間は増えたが、その分高SES層はその時間を勉強や習い事など文化的な活動に使う傾向があり、一日をメディアの消費などで過ごしがちな低SES層と比較して格差が広がったということを述べています。自由にすればいいほどその時優秀な人間はより優秀になるが、その時の劣等生はさらに劣っていき、平等性を失うということですね。より優秀な人間を増やす方がいいか、全体にチャンスを与えて埋もれている才能を活かしていく方がいいか、確かにこれは難しい問題ですね。そもそも低SES層は逆転することを思いもしないということもポイントだと思いました。

 というわけで、『教育格差』は日本の現状の教育格差に関する研究を、私のような一般市民にもわかるように伝えた良書でした。二度目読むときは各章のまとめと7章だけを読めばいいと思います。現在高SESの方は本書の目的とは逸れますが、どういう教育を施せばいいのかの指針になりますし、現在低SESの方は年収などどうしようもない部分もありますが、意図的教育や文化的な活動の推進など意識を変えることはできるかもしれません。