マダツボミの観察日誌

ギャルゲーマーによる、ギャルゲーやラノベの感想、備忘録とか

【究極の雰囲気ゲー】Re:LieF~親愛なるあなたへ~ 感想

 さて9月ももう終わりで、なんと2020年も終わり間近ですが、変わらずエロゲをやっています。どうもこんにちは。

 今回は、『Re:LieF~親愛なるあなたへ~』をプレイしましたので、その感想記事となります。

 あ、普通にネタバレするから注意です。

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 プレイし終えた第一感の感想ですが、例えるならめちゃくちゃ薄味の高級フランス料理ってところでしょうか。

 全編通して、雰囲気はすごい良いんですよね。背景、CG、演出、音楽、この辺のノベルゲーの雰囲気を作り出す要素は、総じて素晴らしかった。特にOPは耳に残る旋律と透き通った歌声をバックに、目を奪われるような美しい演出と、ここからの展開を指し示すような期待感の持てるムービーで、文句の付け所がありませんでした。OP大賞取れる出来ですよ!これは!(そんなものはない)

 しかし、ノベルゲーの屋台骨となるシナリオには一言物申したい。全体的に薄味気味、悪く言えば退屈なシナリオは、このゲームの雰囲気を損ねないと言う意味で仕方のないこととしても、ラストの展開には納得がいきません。ヤリ捨てはやめろってお兄さんと約束したよなぁ???

 内容としてはドロップアウトしてしまった社会人の再出発ものだと思っていたのですが、どちらかと言えばSF色の強いゲームでしたね。共通の日向子編はありがちですが、日向子の成長を見ることができて満足でした。というかこのゲームを買う人が予想した内容はこれだったんじゃないでしょうか。

 個別ルートはあくまで本筋であるアイルートを補助するようなルートで、初見、終わり方が意味不明でした。途中のヒロインとのやり取りは悪くはなかったのですが、悪くはなかった止まり。普通のギャルゲーであれば主人公が何もしなくてもモテることに違和感を(慣れたので)覚えないのですが、こうリアルに近づけられると違和感が如実に現れるんですよね。あまり関係を深堀しないストーリーだったというのも効いているのかもしれません。

 話を戻して個別の終わり方ですが、最後までプレイしてみれば、なるほどと納得する部分もありましたが、もうちょっと個別で深掘りしてもよかったのかなと思います。もも√の誰がトトを消したのかとか、ミリャちゃんは何で名前を変えて計画に参加していたのかとか。全部読み終わってみても、明確にはわからないですね。感情を持ったAIを憎んでいる存在って、あるなら流花ちゃんぐらいしか存在しないんですけど、性格的にはやらなさそうです。消去法的には理人ですかね、理人は過去の話がなかった気がするので、もしかしたらAIを憎むような過去が・・・いやないか。

 そして肝心のアイルートですが、私からは一言。なぜユールートにしなかったのか、につきます。ただこれは、アイが悪いわけではないでしょう。確かに過去、幼い司と画面を通して触れ合っていた記憶はコピーされているわけですし、惹かれあうのもわかります。ただどこまでもユーが救わないですよね、この話。婚約者を妹にとられたみたいなもんですよ!

 確かに物語上、アイの存在がユーに次の一歩を踏み出させるために必要だったということはわかります。ユーは、司を陥れた現実世界を酷く嫌悪してしまい、暴走してしまった。暴走を止めるためかわかりませんが、ここでバックアップとして司との過去だけをコピーしたアイが生まれ、彼女は感情まではコピーされていないから独自のAIとして存在することができ、そしてだからこそアイはユーを止めることができました。

 これは、弱い司が仮面の司を止めたことを対比させているので、物語の構造的には悪くはないです。ただこれはどちらも消された方の人格のことが一切考慮されていないのが心苦しい。そもそも仮面だって本当の自分だろって思うんです。誰だって多かれ少なかれ仮面を被って生きていて、それは成りたい自分であることも多くて、仮面を被り続けることで徐々に元の自分と織り交ざっていき、自分が徐々に変質していく、それを人は『成長』と呼ぶんだと私は思います。確かに殻に閉じこもることが正しいとは思えませんが、そうといって仮面を完全否定して、ただ生の状態で現実と立ち向かうのが正しいという本作の趣旨には疑問を感じました。

 また、ユーは消されていないですが、アイに最愛の司を取られてしまっている。それについて特に何の反応もなく受け入れているユーにも違和感がありました。お前、ピアノの経験をアイに引き継がなかったのは、その関係性というか個人の思いを大切にしていた証拠なんじゃないのかよと。そしてだからこそ、ラストのピアノの協奏シーンは人とAIの心をつなぐ感動的なシーンなわけですが、その前のアイの下りが入ってしまったのでイマイチ乗り切れずにいた自分がいました。美しいシーンではあるんだけど、ユーの心情を思うと心が苦しくなります。

 これ所謂スワンプマンの話だと思うのですが、その割にはAIの個としての葛藤とか存在証明とかそういう所が描かれてなかったのが残念です。結局のところAIは人間として扱ってなくてAIなんだなって思わせてしまうような所が、このシナリオの問題点だったのかと思います。友達って、自分(人間)にとって都合の良い存在のことを指すんか?っていう。

 そもそもアイを存在させる理由が物語の構造上の都合でしかないというところが問題なのだと思います。私が読み飛ばしていただけなのかもしれませんが、どう考えてもアイの存在は異質です。暴走したユーを止めるのはトライメント計画で成長した司でよかったんじゃないでしょうか。ただこれは、私がユーに強く思い入れをしているからかもしれませんね。

 とまあ、ラストの展開には少し疑問を持ったものの、本作は醸し出す素晴らしい雰囲気に押され最後までプレイできてしまったーそんな作品でした。続編も、エロなしですがRe:Liefで選ばなかった新たな選択肢ということですので、ユーの救いを求めてプレイしたいなと思います。