マダツボミの観察日誌

ギャルゲーマーによる、ギャルゲーやラノベの感想、備忘録とか

弱キャラ友崎くん Lv.1感想【人生は神ゲーか?】

 今回は『弱キャラ友崎くん Lv.1』の感想を残していきます。

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

 

 本作は『このライトノベルがすごい2020』で3位に入り、アニメ化も決定するなど、巷では評判の作品のようですね。私もタイトルに惹かれたのと、Kindle Unlimitedの対象だったので読んでみました。

 この作品は『人生はクソゲーだ』と言って現実から逃げている、陰キャ友崎くんが、自分の大好きなゲームの中で出会った最強のリア充である日南葵に『人生の攻略法』を教わり、変わっていくと言う話です。

 まず、作品の面白さどうこうはおいておいて、この作品が現代中高生の中で流行っているという事実に価値があると思います。この作品の主ターゲット層である陰キャ、これ読んでて辛くないか?最初ヒロインの葵ちゃんに事実とはいえボロッカスに言われて、それでもその先を読もうっていう所に、現代な中高生の前向きな意志を感じました。明るいな日本。みんなこのラノベを読んで、リア充まではいかなくても、それなりにコミュニケーションをとれる人間になるんだぞ・・・。

 

 さて、リア充であるのがこの世界の正しさなのか、そもそも正しいってなんだよって言う話をすれば、正しいことなんてないよっていうのが模範解答ではあると思います。ですが、こと学校という小さなくくりで持ってすれば、リア充であることが優れていることであるという【空気】がありますね。人生をゲームとして例えればそういうルールのゲームになっているわけです。ゲームをやる中で、ルールそのものに突っ込むのはナンセンスですね。本作の主人公である友崎くんも、それは理解しながらも、そこに至る道筋が分からないので、端から諦めているわけです。

 『人生はクソゲーだ』と言い訳をして。  

 

 人類全体を見れば、勿論『人生はクソゲーである』と私も思います発展途上国や紛争地帯で生まれた子供たちと、物が豊富にあふれていて、職業選択の自由があり、教育を全員が受けることができる日本で生まれた子供たちとの間には、絶対に越えられない壁があります。それでも努力次第で――という人もいるかもしれませんが、そもそも努力しようという発想にいたれない環境というの間違いなく存在し、それを努力次第でというのは筋違いです。キャラ差がはっきりしています。

 ただ、日本のそれも埼玉という都心の学生という視点で見れば、『人生はクソゲーである』なんていうのは、言い訳でしかないとも感じます。勿論、虐待を受けているなど家族環境的要因もあるので一概には言えませんが、少なくとも友崎くんの場合はそうじゃない。主語がでかいから話がややこしいわけですが、彼らは別に世界全体の話をしているわけじゃなくて、もっと小さなコミュニティの中でクソゲー神ゲーかの話をしているわけです。持論を語る上で、つい主語が大きくなってしまうことはありませんか?そこを勘違いすると、この作品を楽しめないと思います。

 私もまごうことなき陰キャなのでわかるのですが、陰キャは何かしら言い訳をつけて、現実から逃げようとします。世界は不平等だから~とかセンスがないから~とか、喋るのがへたくそだから~、俺は独りのほうが楽しいから~と。でもそういうのを日南葵が最初にたたきつぶしてくれる。お前リア充になったことないのにリア充のことがわかるのかよ?と。かつてこんななに主人公のことをボロッカスにしたヒロインがいたでしょうか。

 じゃあお前陰キャの気持ちわかるのかよ?と聞きたくなるところですが、話の流れからきっと葵は昔ゲームばっかりやってる陰キャだったんでしょうね。その中で理詰めでストイックに物事を極めているnanashiに憧れて、自分も頑張ろうと思ったとかそういうことなんでしょ、私は知ってるよ。もし違ってたら桜の木の下に埋めてもらっても構わない(スコップ用意しないでお願い)。

 それで、友崎くんは小さなところから変わっていきます。見た目から変えるために、表情や姿勢を矯正したり、隣の席の女の子に一日一回声をかけるなどなど。この作品の良いところは、なんだかんだみんな優しいところですよね。これが『西野』の世界だったら、一瞬でヤバい空気になってハブられて虐められてますよ?

 また、女の子も何故か最初からそこそこ好感度があります。菊池さんはギャルゲーキャラ並に最初から好感度高いし、みみみちゃんも気軽に声をかけて来るしと。その辺は現実的ではないんですが、まあでも現実的でないからこそ話に彩りがあって、これを読んで明日から自分も頑張ろうとなるんじゃないでしょうか。こんなんリアルに寄せたらひどい話になるぞマジで。

 

 『人生は神ゲーである』かどうかは微妙なところではありますが、恐らく『人生なんてクソゲー』って言ってる人のほとんどは、ここで言う神ゲーにする可能性を持っていると思います。だから言い訳せずに、どうしたら神ゲーにすることができるかを考えて、それに対して全力で頑張れ!っていうのがこの物語の主張なんでしょう。社会人からすれば新人研修でやるような当たり前の話ではありますが、多分中高生の時にこれを読んでいれば、すげー面白かったし、マスク買って笑顔の練習とかしていたと思います。何百の自己啓発本を読むよりも、一人の可愛い女の子に言われた方が、男の子は変われますよね(著者調べ)。

 ただ私はもうずいぶん前に学園生活とかいうのを超越しちゃったんですよね・・・。そこがこの作品を楽しみ切れなかった点だと思います、悔しい!これが歳をとるということか!

 でもこれからどう友崎くんが変わっていくか、葵ちゃんとの距離を縮めていくかといった恋愛事情は気になるので、次巻以降も読んでみたいと思います。

 ということで今回はこの辺で、ちょっと予想とは違った作品でしたが、普通に楽しませてもらいました。ではでは。