【寄稿】バンバンバンブルビー【Twelve Minutes】
友人に勧められるがまま、内容をほとんど確認せずに購入した『Twelve Minutes』というゲーム。
今作は、12分間のループに囚われた主人公が些細な行動の変化を起こす事で物語の背景を読み解き、ハッピーエンドを目指す物語となっている。
この記事にはTwelve Minutesのネタバレを含みます。
ゲーム未プレイの方、今後プレイする可能性がある方は閲覧非推奨です。
【あらすじ】
12時を指していた時計は自宅のドアをくぐった瞬間に動き始める。
マンションの立派な廊下とは打って変わり、最低限の生活必需品だけを置いたような極めて簡素な自宅。
味気ない毎日に色を添えるのは4枚の絵画と寝室の草(あと妻も)。
どうやら今日はサプライズパーティーとの事らしい。
思い当たる節はないが、妻がチョコレートケーキとプレゼントを用意してくれているようだ。
無償で祝ってくれるのならばぜひとも享受しておこう。
妻はプレゼントを取りに寝室に一度戻った。
私は待ち切れず、チョコレートケーキに手を伸ばした。
「これは、うん。なかなか、おいしい」
妻の愛情がこもった手作りのチョコレートケーキ。
正直、駅前に最近できたケーキ屋のチーズケーキの方が好みではあるが(もちろん、1人で食べた)、まあ良しとしよう。
プレゼントを持って部屋から出てきた妻は一瞬呆気に取られたような顔をした後、急に怒り出した。
チーズケーキの話は心の中で留めたので、妻が怒る理由が見当たらない。
「せっかくのパーティーなんだ。怒っていたら、美味しいものも美味しくなくなってしまうよ。」
説得虚しく、妻は興奮したまま部屋を出て行ってしまった。
自作ケーキの足は早いので、私は妻の分も食べることにした。
流石に2個目のチョコケーキは味のくどさに耐えきれず、半分以上を残してしまった。
ラップをして冷蔵庫に戻し、妻が戻ってきた時に食べてもらえるようにした。
なにやら廊下が騒がしい。
やれやれ、もう戻ってきたか。突発的に家から出ていくような行動をする人間はつまるところ構って欲しいんだよな。
内心で毒吐きながら椅子から立ち上がり迎合の姿勢を見せる。
こういう細かい気遣いが夫婦仲を円満に取り持つポイントだ。
ガチャリと扉が開く音がして、部屋に入ってきたのは妻と、見知らぬスキンヘッドだった。
ハゲが声を荒げて言うことによると、妻には8年前に実父を殺した殺人容疑が掛けられているようだ。どうやら、彼は警官らしい。
一切気づかなかった。8年前と言えば自分と出会った頃ではないか。
裏切られた気持ちと妻を信じたい気持ちが9:1くらいで揺れ動く中、警官によって拘束されてしまう。
この世の中に、警官が自宅に入り込んで来た際に盲目的に妻を庇える聖人君主たる人格者様は一体どのくらいいるのだろう。
国家権力には逆らわないに越したことはない。だって、自分の命は一つだけなのだから。
どうやら警官は証拠品となる懐中時計を探しているようだ。
しかし、妻はそんなもの知らないの一点張り。話は平行線で埒があかない。
痺れを切らした警官がこちらに向かってきて、私の背中にまたがり、くびを、しめ。て。いき。。が。
そして気づいたらタイムリープを起こし、自宅に入ってきた場面まで戻される。
この感覚はクセになりそうだ。
この後、ループを繰り返すことで妻の殺人容疑の真偽、警官の目的と妻との関係、8年前の真実が少しずつ分かっていきます。
なんやかんやがありまして、主人公こそがサラの父親(主人公の父親でもある)を殺した犯人"モンスター"であることが判明します。
モンスターであることを自覚した後に懐中時計に触れると、父親がいる謎の空間(58分の世界)に引き込まれ、父親と対峙します。
選択肢によって3種類のエンディングに分岐します。
【感想・考察とか】
覚えていません。
忘却をすることでのみ、本当の意味で時間の糸を落とし、今まさにこの瞬間を生きているという体験に近付けるので。
おわり
【双六が魅せる縁の煌めき】『もののあはれは彩の頃。』感想・考察
今日を生きて、明日を目指せる――ああ、なんてラッキーなことでしょうね。ありえないくらい……幸運なこと
安定安心の企画シナリオ冬茜トム氏の贈る、和風双六ADG『もののあはれは彩の頃。』(通称さいころ)プレイしてきました。秋を舞台にした作品なので少し時期外れではありますが、美しい秋景色を背景に進んでいく物語は趣深く、雰囲気の良いゲームでしたね。
オールクリアしての感想ですが、少し設定上の粗というか取り残しはあったものの、『アメグレ』『さくレット』と同様に今作も現実と異なる常識を持った異世界に生きる人間たちの考え方の描写が優れており、物語に引き込まれましたね。今回は双六ということで、次2作と比べると特異さが増していて少し強引だなと感じる所もありましたが、それすらも伏線だったという驚きの展開・・・おみそれいりました。この世界の見え方が一変する瞬間がたまらなく好きなんですよね。それが好きだから冬茜トム氏の作品を遊んでいるところもあります。
また今作は『人は一人では生きられない』というテーマが、縁が重要となる双六の世界観と実にマッチしていて、非常に説得力がありました。当たり前のテーマですが、普通の世界じゃなく双六の世界だからこそ特に美しく見えましたね。昔『ATRI』の感想で同じようなことを言いましたが、今作の方がより調和がとれてますね。
更に言えば今作は、常に読み手に疑問を与え、徐々に世界の真実を明かしていくことで、飽きさせずに最後まで読ませることに成功させています。中ダレがないのはギャルゲー界では偉いですね。反面、最大瞬間風速は落ちているのが欠点と言えば欠点なのかもしれません。あと悪い点を挙げるなら、ヒロインとの絆を深めていくシーンはあくまで過去回想に頼っており、ギャルゲーとしてこのシナリオはどうなのかという疑問はあります。
今回はそんな『さいころ』の各ルート雑感を書いていきますので、ここからはネタバレ注意です。
みさきルート
正論では他人を救うことはない、ただ正論は自分を救うことができる。
みさきルートはこれに尽きると思います。人から言われる正論ほどムカつくものはないし、大抵の場合正論を言った所で問題は解決しませんし、逆に意固地になって更に状況が悪くなる場合すらあります。じゃあなんで人は正論を吐くのか?それは正論は自分が変わりたい、こうありたいと思った時には折れない旗印になるからなのです。正論を信じて自分は変わってきたから、正論を吐くことで相手も変われると信じているのだと私は思います。同じ言葉なのに自分から出るか、他人から出るのかによって捉え方が変わってしまうのはとても面白いですね。
作中のみさきは理想の自分を保つために、どんなことからも逃げてはいけないという正論を自らに振りかざし、あり得ないメンタルを見せつけます。どんな状況でも笑顔を失わず、真っすぐ生きるキャラを私は大好きなんですよね。更に言うと、そんな子が辛い現実や、自分の主張と反する存在に出会ってしまった時に、それでも真っすぐ生きようとする、そういう心の在り方を描いた作品が大好きなんです。一番最近だとTOBのエレノアちゃんですね。
本作のみさきも双六から生還しても自分は病気で死ぬ確率が高いという非常に厳しい状況に置かれ、一度は心が折れてしまいます。それでも仲間たちが信じる自分像――どんな時でも逃げないことに支えられ、再度立ち上がるという所が好きすぎる。カミナの兄貴的に言えば、『俺が信じるお前を信じろ』って奴ですね、熱い。
けれど――鬼無水みさきという人間は、ただ個人だけで成り立っていたものなのか?
これは、本作のテーマである『人は一人で生きるに在らず』とも合致しているんですよね。人と人との縁が個人の人格さえも形成するという。自分の知っている自分自身と他人が考えている自分像がずれていることは、良くも悪くもあると思います。ただ他人の期待が、自分自身を支えるということもまたあるのではないでしょうか。優秀だと思われているから自信をもって振る舞える、面白い人だと思われているから人を笑わせようと努力するなど、例を挙げれば枚挙にいとまがありません。みさきにしても、本来の彼女はもっと弱いのかもしれません。時には逃げたくなるときもある。ただ周りの期待がそれを許さないのです。それはある意味では残酷なことかもしれませんが、それに耐えられる魂をみさきは持っているから、彼女は完璧な存在として君臨でき、そしてその在り方はとても美しい。
逆に縁はそこまで強くなかったから消えてしまった。どんなことからも逃げないという正論は、あくまで自分発露だから納得できるのであり、他者から押し付けるものではない、そんなことを言いたかったのかもしれません。
みさきルートはギミック的な面白さはありませんでしたが、みさきの在り方は大変好ましく、非常に好きなルートでした。
琥珀ルート
琥珀ルートは作中屈指のギミックを持つルートでしたね。このライターの作品をプレイする人はこれを待っていたのではないでしょうか?サイコロの出目が固定されることに気づいた黎が仕組んだ功名な罠から、猫の眼を利用した赤のマスを無視するというギミックは、まさに見えていた世界が一瞬でひっくり返るようで気持ち良すぎました。
ただ他に特に言うこともないのがこのルート。琥珀ちゃんは可愛いかったんですけど、それよりも変わらないみさきの在り方がとても好ましかったです。
クレアルート
クレアルートは作中で最も恋愛シュミレーションゲームやってましたね。縁の強さに応じて場にいる人の気持ちが筒抜けになってしまう合縁という戒が、ギャルゲーと凄くマッチしていました。特に隣に座って一緒に資料を読むんだけど、当然主人公は可愛いクレアを意識してドキドキしちゃうのを合縁でバレバレになっちゃうとことか、好きな気持ちは伝わってるくせに言葉に出されるとドギマギしちゃうところとか、寝たふり決め込んでる主人公に好きだという気持ちを吐露するところとか、最高に身もだえましたね。そして縁が深まって、互いを想う気持ちが嫌ってぐらいに伝わってきちゃうのがもう!これだよ、これが欲しかった!他のルートと比べれば同じ場所に長く二人でいるということが多かったから、順当に二人が近づいてくのを感じられて、非常に良いルートでしたね。
勿論、アタック25双六デスゲームも全くどういうオチになるか読めずに、こんだけ人いたら千日手になるのでは?と思っていたところで綺麗に纏めてきたのが素晴らしい。ただ、他2ルートと違って一人しか上がれないという所が物語のテーマ的にどうかなっていう所はありました。
クレアちゃんについて少し。相手の気持ちが分からない中でとるコミュニケーションの面倒さは私もとても理解できます。というか人類すべからく相手の気持ちなんぞわからんので(能力者混じってたら知らん)、多かれ少なかれ思うところはあるでしょう。でもその面倒臭さがいいなどとは口を滑らせても言いませんが、私は相手の気持ちなど分からない方がいいと思うのです。皆が個を持っている以上一つになることはできないし、たとえ知ったところで皆の気持ちを拾いきれずに頭と心がパンクしてしまうのがオチでしょう。そういう意味で心を覗ければ何でも解決できると考えたクレアちゃんはその賢さとは裏腹に、幼い精神を持っていたと言えます。ちょっと物語の趣旨からは外れちゃいますけど、でもそういうとこが可愛いんですよね。
クレアルートは、明るく元気で笑顔が可愛く、勝負事に徹しきれない純粋なクレアちゃんを純粋に愛でることができる良ルートだったと思います。
TRUEルート(京楓ルート)
みさきルートで正論は人を救わない―という話をしました。じゃあ人を救うのは何でしょうか?それは情熱、ひたむきな心なんですよね。
TRUEルートの大きな山場は二つありますが、そのうち一つが縁と大誠のやり取りだと思います。あのシーンいいですよね。現実から逃げて逃げて八つ当たりしてきた縁を、大誠が文字通り体を張って説得する。これができるのは大誠だけだという所が、このシーンに説得力が増し感動的になったポイントだと思います。
みさきと大誠の大きな違いは何かと言えば、みさきはこうありたいと思っていることを他人も強制しているのに対して、大誠の「自殺はダメだ」というのは信念であり、どんなことがあっても曲げない自分の旗印なんですよね。どちらも正論なんですけど、大誠のそれは自分発露の想いであって、この信念に従うのは当たり前のことで、だから熱量が違う。故に、自分の身を呈してでも縁の自殺を止めるし、一手一手が致死の攻撃を平然とした顔で無防備に受けられる。その真っすぐな救いたいという気持ちが縁を救ったわけで、彼にしか彼女を救えなかったんです。それってとても劇的で、運命的な在り方なんですよね。
また縁にずっと一緒に居てくれと言われた大誠がしっかり断っているのも好感が持てます。あくまで彼は彼女を救いたいだけで、そこに恋愛の気持ちはない。そういう不純物を入れないからこそ彼の気持ちは輝いて見えるのです。ここから彼らが好きあうかどうかはまた別のお話というわけで。主人公より主人公してますよ、マジで。
続けてTRUEルートのもう一つの山場は、勿論鬼、物部先生との対決ですよね。これ、ここまでの地の文が全て物部先生視点だったのが凄すぎる。確かに3人称で話を進めるギャルゲーは珍しいなと思っていたし、地の文で双六の世界観を読み手に押し付けることで無理やり世界を構築していて、今回は少し作りが下手だなーなんて思ってた所でこれですよ。
全 部 伏 線 だ っ た 。
戦いの締めも、全員との縁を消すことで双六上に存在できなくするというもので、本作のテーマと合致していて素晴らしいですよね。人は一人では生きていけない、友情でも愛情でも憎悪でも必ず何かしらの縁で結ばれている。その縁を全て切れば永沈するのみ――この世界はそういう世界なんだってことを再確認させられます。
ただ、物部先生の在り方には多少疑問が残るところがあります。物部先生は、何度もこの双六デスゲームをクリアし、持ち帰った縁を何個も所有する存在。クレアの父とカラスの盟友で共に双六の研究をしていたことは分かっています。ただどこで物部先生がおかしくなったのか、何故暁の天縁を欲しがっていたのかなどがやっぱりよくわかりません。
ポイントとなりそうなのは、みさきルートでの幻日シーンで物部先生が暁に占ってもらっているところで、自分には想い人がいるということ、自分は縁の下の存在にしかなれないと吐露していることぐらいなんですよね。で、これだけ見ると彼の観察対象は暁と縁ぐらいですから、暁の力になりたいと読むのが自然なのですが、そうなると物部先生が暁を陥れようとする理由がわからない。
ここで『紀長谷雄の双六伝説』を思い返してみましょう。紀長谷雄は鬼と双六をし勝利を収めて、対価として絶世の美女をもらいますが、約束を破り100日を待たずに女を抱いたために溶けてなくなってしまうというお話でした。今作、鬼は物部先生だったわけですが、じゃあ紀長谷雄は誰だったんでしょう。双六は一人ではできない、盤と駒と対戦相手が必要です。作中では敵は京楓と言っていましたが、これは本当でしょうか?確かに強い敵意を暁に持っていましたが、やはり駒とプレイヤーでは次元が違いすぎる。ならば紀長谷雄は別にいるという話になるわけです。そして消去法で考えるなら、紀長谷雄はバークリー・クレアということになります。作中、クレアは暁に似た趣味を持っている人がいると言っており、それは父親であるバークリー・クレアであると考えられることから、紀長谷雄=陰陽師=バークリー・クレアと無理やりつなげることもできます。
となるならば、物部先生は真に暁のことを思っていて、みさきを助けるためにこの双六をバークリー・クレアと共謀して始めたというのが真相だと考えられないでしょうか。それこそ節分の日に父親が鬼の面を被って、豆を投げられるように。最初から自分は負けるつもりでいて、大誠の病縁を持ち帰らせるように仕向けたのかもしれません。いや病縁すらもたまたまで、天縁があれば奇跡を起こせると考えた方が自然ですか。ただ、生きて帰るには鬼を倒す必要があった、だからわざと挑発し、倒し方を婉曲的に教示したのです。紀長谷雄がバークリー・クレアで、みさきを助けるために双六を始めたのだから、クレアがそのことに気づいて服毒したのもおかしな話じゃなくなります。バークリーと知己であるカラスが双六の開催に気づいたのもまた必然なのです。また、物部先生は縁のこともずっと見ていて、丁度縁とそれを助けた大誠が死にかけていたから丁度良いと考えたのかもしれません。そう考えてしまうと、狙ってやったこととはいえ随分悲しい結末ですね。
また、別の見方をしてみましょう。冬茜トム氏の作品である『さいころ』『アメグレ』『さくレット』この3作品に共通することは、とても丁寧に伏線を回収するにも関わらず、不自然なほど所謂ラスボスの過去が語られないことにあります。『アメグレ』であれば実行犯はまた別ですが、真の黒幕はひと言も喋らぬままフェードアウトしますし、『さくレット』の加藤は驚くほどその目的が語られません。『さいころ』にしても物部先生は唐突感がぬぐえないでしょう。
これらを見るに冬茜トム作品では、悪役は我々読者と縁を繋ぐことすら許さないということを暗に言いたいのではないでしょうか。悪役に対して話を深めれば、それだけ同情だったり、共感だったり、憎悪だったりできるわけですが、それすら許さない。だから、毎回冬茜トム氏のラスボスは縁を切るだの、人知れず死ぬだの、存在を消されるだのするわけです。絶対的な勧善懲悪、桃太郎の下りが作中出てくるのはそれを示唆しているとも読み取れますね。
まとめ
今回めっちゃ長くなりました。『さいころ』はその文体の小難しさや、背景の古典知識の欠如などもあって非常に読みにくい作品ではありましたが、相変わらず読み直す度に感じ方が変わるスルメ作品で、個人的満足度はとても高いです(これきっと仏教知識増やせばもっと面白いんだろうなぁ)。
ただやっぱりギャルゲーとして、これはどうなの?っていうのは免れないところだと思います。最後の選択肢でクレア以外を選ぶのが辛くて辛くて・・・いやうっきうきで選択はしたわけですが(しかも最初はみさきに行った)。
今作が秋、アメグレは冬、さくレットは春ですので次は夏ゲー・・・期待しちゃいますね!それまでに3作再度読み直してみても、また新しい発見があって面白いかもしれませんね。
というわけで今回はこの辺で、ではでは。
【朱雀院椿最高】『絆きらめく恋いろは』感想
皆さん、ギャルゲーに一番大事なことは何だと思いますか?
シナリオの良し悪し?物語を彩る音楽?CGの美麗さ?勿論それらは全部大事な所で、私も基本はそれらを重視しています。でもそういうのを全部抜きにして、好きな作品が存在するんですよね。
それらの作品に共通すること、それは――
『滅茶苦茶好きなヒロインがいること』です。
というわけで、今回は『絆きらめく恋いろは』プレイしてきたので、感想を残したいと思います。刃道というスポーツを題材にしていたはずが、途中で謎の伝奇要素が混入して、感情の置き所に困った本作ですが、まあシナリオはどうでもいいです(ぶっちゃけたな、おい)。とにかくヒロインの一人である朱雀院椿が滅茶苦茶可愛く、もう只管椿を愛でれる最高の作品でした。
いや他のヒロインも可愛かったですよ?シオンはロリ巨乳可愛いし、シアは活発元気で歯に衣を着せず自分の道を突っ走って可愛かったし、サクヤは…うん、親友だよ。でもでもでも、椿の可愛さには勝てません。
まず、見た目が完璧ですよね。綺麗な青みがかった白髪のサイドポニーに、服装に合わせたリボンがとてもチャーミング。クリっとした丸い琥珀色の瞳には見るものを引き付けるような何かがあるし、小さな可愛らしい顔の形からの凛とした表情にはいい意味でギャップを感じます。お嬢様然とした私服は、髪の色とリボンの色と合わせてベージュと赤のツートンになっており滅茶苦茶似合ってるし、胸を強調するような服装でありながら下品になっていない所もグッド。制服の謎マントも私服の可愛さから打って変わって爽やかさと強かさを醸し出していて魅力的です。自分の張りぼての強さを誇示するためにマントを着てると想像すると可愛らしくて更に良いです。戦装束姿は更にカッコよさと美しさを強調した服になっていて、戦闘CGは思わず見惚れてしまいます。
そして椿ちゃんの性格というか、立ち振る舞いというか、在り方がもうドストライクだったんですよね。まずお姉ちゃんぶってる所が最高に可愛いですよね。昔大好きだったヒロインにダカーポⅡの音姫さんがいましたが、それに匹敵します。全然主人公には相手にされてないのに、必死にお姉ちゃんぶってるところが可愛いんです!私も甘やかされたい!でもいざ攻められるとひよっちゃうところも可愛い、全部可愛い。もう可愛いしか言わないマシーンと化してました。
また、椿は朱雀院という強さだけが求められている家に生まれながら、他の親族と比べると小さな才能しか持たないことに苦しみ、それでもそこで折れないで必死に努力して学園の頂点を維持しているというのが好きすぎる。こういう逆境の時に努力できる人間は本当に好きで、憧れます。勝利だけを求めて、ストイックに人になんと言われようとも自分のスタイルを維持する、そして勝つ、そういう所が大好きでした。カッコよすぎる。つまらない剣とかそういうの良いんですよ、お前ガッサのポイヒ嵌め認めなかった奴か~~~って言いたくなります。
椿は学園最強とかいう称号を掲げてながら全然強キャラ感がないんですよね。都さんには雑魚キャラ扱いされるし、いつも苦戦して嫌になるわ・・・とか言ってるし、でもそれがいいんですよね。どこか人間味があるというか、自分の延長上にいるような気がして、完璧なようでどこか抜けているというのが魅力なんです。
大好きな台詞。
そんな椿だから、一度の敗北でぽっきり折れてしまって・・・でも、そこで主人公が折れた刀を打ち直して助けるというのもいいですよね。ありがちなシナリオですが、王道は王道たる所以があるから王道で、それが良い。最後に家に囚われた自分自身からも解放され、完璧エンドですよ。特に突っ込む所もなし、末永く幸せになってくれ。
本作は、バグが多くて滅茶苦茶落ちるし、お世辞でもシナリオに奥行きがあるとは言えないけど、朱雀院椿という素晴らしいキャラを生み出したという点で100点満点を上げれる作品でした。結局、キャラを好きになれればそれで勝ちなんですよ!ファンディスクもあるみたいなので、そちらも楽しみです。
というわけで今回はこの辺で、ではでは。
『未来ラジオと人工鳩』感想
あけましておめでとうございます!新年早々世間は大変なことになっていますが、私は今回も変わらず感想記事を書いていきたいと思います。
今回はLaplacianさんの『未来ラジオと人工鳩』をプレイしてきました。この作品は昔から知っていたのですが、批評空間のあまりの評価の低さに手を出すのをためらっていたんですね。ただ、昨年度ドはまりした『白昼夢の青写真』の前作品ということでプレイしてみたい欲が高まり、FANZAのウィンターセールで安くなっていたこともあって、購入、プレイしてきました。
正直舐めてました、面白いじゃないですか。なんか信者みたいなで嫌なのですが、この作品は間違いなく過小評価されてると思います(批評空間で80点ぐらいはあってもいい)。
久しぶりにあらすじです。
通信網の変わりとして発明された人工鳩が空を飛ぶ時代、人工鳩は当初の目的からずれて人類が発する電波を食べ、人類は無線による通信網を失なった。この電波食いによって落下したジャンボジェット機の生き残りである主人公ソラは、そんな状況でも他者と通信可能なラジオを開発する。ただそのラジオは未来からの放送を受信する不思議なラジオで―――というお話。
本作は世界観がまずとてもいいですよね。メンテ不要の人口鳩を飛ばして、ネットワークを構築するという所に夢があるし、繋がりが失われた世界でラジオを作って配信するというのもとてもエモい。未来の放送が流れてきたシーンでは驚きと次の展開が気になってしょうがなかったし、カグヤとの出会いは幻想的でした。美麗なCGと相まって兎に角雰囲気の良い作品でしたね(雰囲気の良い作品と言うと、退屈なことを最大限オブラートに包んだ表現に聞こえますが、本作は純粋に世界観に浸れるという意味ですよ!)。
そして肝心の物語もしっかりしていました。序盤中盤はいいけど終盤が駄目っていう話を散々聞かされていたので、期待せずに読めたのが良かったのかもしれませんが、凄く綺麗にまとまっていましたね。秋奈の父親の問題、電波食いの謎、未来ラジオ、残された悲しい問題の解決策など全てが繋がっていて隙が無いです。(悪く言えば小綺麗にまとまりすぎてたともいえるかも?)ダイジェスト版『白昼夢』というか、随所にこれが繋がってたんだなぁなんて感慨深くて良かったです。『白昼夢』が面白かったユーザーには是非勧めたい作品ですね。ただ、強くてニューゲームは相変わらず蛇足に感じました。そこまで描いてくれるのも、色々な客層に向けていいのかなとも思いますが。
最後にちょっとキャラの話を。今作ヒロインは4人いるわけですが、とにかくカグヤが可愛い、げろ可愛い。薄幸の美少女って本当に好きなんですよね、追い詰められたときにこそ人間の美しさが出るというか、可愛いさと綺麗さが同居してるというか。普通可愛さと綺麗さって同居しないじゃないですか?それを彼女が歩んできた辛い歴史が環境が作り出しているんですよね。もうそりゃああんな女の子に生きたいって言われたら私でもこの体差し出しますよ、本当。
というわけで短いですけど今回はこの辺で締めたいと思います。『未来ラジオと人工鳩』は短いながら良作でしたね。批評空間の悪評に押されて購入をためらった人にも是非やって欲しいそんな作品でした。
【2020年】マダツボミのギャルゲーBEST10
2020年もあと僅か、皆さん2020年はどんな年だったでしょうか?
私はコロナ自粛も相まって、ここ数年で一番ギャルゲーをプレイした、ギャルゲーイヤー(滅茶苦茶嫌な響き)でしたね。というわけで、今回は”私が”2020年にプレイした作品のベスト10を紹介していきたいと思います。なので旧作が含まれます。勿論ネタバレはなしで書くので未プレイの方も安心して読んでいただければと。ただ記事を書いた作品についてはリンクを張りますが、私の書いてる感想記事は大体ネタバレしてるのでそこは注意してください。
では早速行きましょう。
第10位 『きまぐれテンプテーション』シルキーズプラスわさび
トップバッター第10位は『きまぐれテンプテーション』です。アンネのおっぱいに釣られて購入した本作ですが、想像以上に面白い作品でした。
物語の内容は、アパート住人怪死事件の調査を霊的な観点から解決に導くというものになります。内容的にどうして重くなりがちなのですが、可愛いくてエッチなアンネが随所で緩和させてくれるので、推理ホラー作品としては非常に読みやすいというのが本作の評価ポイントかなと思います。そして、推理モノとしてみても優れているのが更にポイントが高いです。また、エロゲでは重要なHシーンも流行りのE-moteを使っていてぬるぬる動き、何よりアンネちゃんが幼な可愛いので実用性もあると思います。本当だったらもうちょい順位高くてもいいんですが、筆者がホラー苦手なのでこの順位に収まりました。
第9位 『なないろリーンカーネーション』シルキーズプラスわさび
続けて第9位は『なないろリーンカーネーション』です。同じメーカーが二連続となってしまいましたが許してください、ライター買いした結果です。でも今のところかずきふみ氏の作品で外れはないので、おすすめです。
本作のあらすじは、霊能力がある主人公が、超能力を持つ鬼を使役し、街で起こる事件を解決しながら、現世にとどまった幽霊を成仏させていくというものになります。このライターさんはとにかく構成が優れていて、途中退屈な部分もあるのですが最後にきちんと泣かせてくれるのが偉いです。例に漏れず私も号泣しました。
何気ない毎日がとても愛おしく見えてくる本作は、記憶に残る作品だったと思います。
第8位 『マルコと銀河竜』TOKYOTOON
どんどんいきましょう、第8位はギャルゲーかどうか微妙に怪しいですが、『マルコと銀河竜』です。これは泣けるとか、構成が優れているとか、心に残るとかそういう作品ではありません。とにかく笑えます。
『ノラと皇女と野良猫ハート』でおなじみのライターハト氏とあり得ないぐらい多いCGで彩られる本作は勢いが凄まじく、一息つく間もなく進んでいき終わります。人によっては短いと感じる方もいるかもしれませんが、大体1クールのアニメだと思えば十分だと感じれるのではないでしょうか?
なんか疲れたなぁと思った日にこの作品をプレイすると元気になれる、そんな作品でした。
第7位 『メモリーズオフ Innocent Fille』MAGES
次、第7位は想い出の作品、『メモリーズオフ InnocentFille』です。感想記事では思い出補正もあってぼろ糞に書きましたが、実際のところはかなり意欲的な作品であったと思います。
物語では心に傷を持った少年少女が交流を深める中で、色々な思いが錯綜し、互いが互いことを思いやりつつもすれ違っていく、そんな現実的な話を描かれています。特におかしなことをしていないのにどうしようもなくなっていく様は、読んでいて胸をつかまれるような気持ちにさせられます。本作はそんな人間ドラマが好きな方には自信をもってお勧めできる作品ですね。
今作は勿論前作までをプレイしていると随所でクスッと笑える所もありますが、単体でやっても十分楽しめる作品となっているので興味のある方は安心して大丈夫ですよ!
第6位 『CROSS†CHANNEL』FlyingShine
まだまだいきます。第6位は『CROSS†CHANNEL』です。正直不朽の名作なのでこの場で語ることも少ないです。
物語は主人公たちしかいなくなった世界で一週間を繰り返すといったものなっています。この作品は、面白かったとか面白くなかったとかそんな二元論の話じゃなくて、生きる助けになったそんな作品。読んだ年齢やどんな体験をしてきたかによっても大きく受け取り方が変わりそうな一作でした。 順位はとても悩んだのですが、今回は純粋な面白さを判定基準として、この順位としました。
第5位 『アメイジング・グレイス』きゃべつそふと
折り返し突入して、第5位は『アメイジング・グレイス』です。これも言わずとしれた名作ですね。
あらすじとしては、記憶を失った主人公が、オーロラと呼ばれる壁に囲まれ外界から隔離された街に起こる事件を解決するために、時間を巻き戻して奔走するといった話になります。いわゆるループものですね。
ライターの冬茜トム氏が描く世界は、現実とよく似ているようで少し違和感を感じるもので、その違和感が解消された瞬間のカタルシスは他ではなかなか味わえないものでした。しかし決して難解な物語と言うわけではなく、分かりやすい物語となっており、それもまたこの作品の凄いとこかなと。キャラも可愛らしく、美しい背景に彩られた本作は、ギャルゲー初心者にも自信をもってお勧めできる作品と言えるでしょう。
第4位 『BARDR SKY dive1,2』戯画
さてそろそろ順位をつけるのが難しくなってきましたが、第4位は『BARDR SKY』です。本作は巷の評判に違わず、世界観、設定、戦闘の面白さ、音楽と全てが優れており非常に面白い作品でした。まだ感想を書けてないので、どこかで書きたいなぁ。
ただ、回想シーンがやたら長いのと戦闘が異常に多く、滅茶苦茶時間を奪われたことが個人的マイナスでした。総プレイ時間70時間以上かかっているので、社会人にはなかなかにきつい作品だったことは間違いないでしょう。
第3位 『さくらの雲*スカアレットの恋』きゃべつそふと
ランキングも終盤に入って参りました。第3位は『さくらの雲*スカアレットの恋』です。第5位から引き続ききゃべつそふとさんのランクインです。企画・シナリオ冬茜トム氏の安定感よ。
物語は、大正時代にタイムスリップしてしまった主人公が、探偵事務所の所長である少女に拾われ、街で発生する事件に巻き込まれていく――という話です。探偵ものみたいなあらすじですが、ミステリというよりは人間偶像劇のような色が強い作品だったと思います。
本作は途中下車方式となっており、途中結構だれるのですが(この分でランクを下げました)、その分後半の盛り上がりは軍を抜いています。とあるギミックではとても驚かされましたし、ラストは滅茶苦茶泣かされました。本作についても、『アメイジング・グレイス』と同じくギャルゲー初心者の方にも自信をもってお勧めできる作品と言えるでしょう。
第2位 『白昼夢の青写真』Lapracian
ランキングも大詰め、第2位は『白昼夢の青写真』です。これは1位にするか滅茶苦茶悩みました。いや、この作品本当に凄いよ、凄いとしか私のつたない語彙力では表現できないくらい凄い。2020年とは言わずに今までやってきたギャルゲーの中でも上位を争うぐらい良い作品でしたね。
3つの物語が絡み合い1本の物語に収束する本作品は最早芸術的。プレイ中は終始物語に引き込まれ、頭が物語の展開が一杯になり、日常生活に支障をきたすぐらいでした。これがエロゲとして一部の人間にしかプレイされないのは本当に勿体ないです。未プレイの方は死ぬ前にやってくれ。やっぱこの作品1位でよくない?
第1位 『9-nine- 』シリーズ ぱれっと
長くなりましたが、栄えある第1位は、『9-nine-』シリーズです!第2位の『白昼夢の青写真』と死ぬほど悩みましたが、流した涙と自分の感想の文字数を比べて『9-nine-』にしました。感想書いてるときの勢いが違うわ、これ。
あらすじは公式の120秒紹介が分かりやすいので、それ見てください(投げやり)。
『9-nine-ここのつここのかここのいろ』あらすじムービー
魅力的なキャラクター、熱い展開、演出、物語のうまさと全てが揃った本作は、エンタメ作品の完成形と言っても過言ではないでしょう。とにかく勢いがあるんです。そして、だからこそ面白い。
正直1作品目の『ここのつここのか』だけは擁護できないのですが、2作品目『そらいろそらうた』は導入として面白く、3作品目『はるいろはるこい』でその片鱗を見せ、4作品目『ゆきいろゆきはな』で開花しました。ゆきいろゆきはなのラストのシーンはもう滅茶苦茶好きで、1か月ぐらいは毎日同じシーンみて泣いてましたね。
『9-nine-』シリーズは、ノリさえ合えば絶対に面白い作品ですので、未プレイの方も上の動画を見て大丈夫そうなら是非プレイしてみてください。
終わりに
如何だったでしょうか?よく見てると同じライターさんの作品ばかりやってますね。かずきふみ氏、冬茜トム氏、緒野わさび氏は今年初めて知ったライターさんでしたが、素晴らしい作品を作られるなと感心しきりで、このようなライターさんと出会えたことが今年、何によりの幸せです。次回作も滅茶苦茶楽しみですね。(スプライトさんはあおかなtwei頼むよ?)
それでは今後のギャルゲー・エロゲ業界の発展を願って、今回はこの辺りで締めたいと思います。皆さま良いお年を。